前向きに読み解く経済の裏側

2016年12月21日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

トランプ氏はブラフ戦術が得意かも

 双方に大きなメリットがある場合でも、「君が僕の条件を飲まなければ、契約を破棄する」と言って相手を脅かす戦略は、一つの選択肢です。上記のタクシーの例で言えば、B氏はA氏に対し、「自分は1円払うから、A氏は残りの1999円を払ってくれ」と言うわけです。A氏は、断れば2000円払う必要が出てきますから、受諾する選択肢もあるでしょう。

 もっとも、B氏も、契約が成立しなければ1000円負担することになるのですから、A氏としては、B氏の提案を蹴ることも要検討です。B氏としては、本当に契約が成立しないリスクを考えて、今少し譲歩した新しい提案をしてくるでしょう。結局、契約が不成立になった時に両者の痛手が等しくなる所で契約が成立するのかも知れません。どちらかの痛手が大きい場合、「契約を破棄すれば、僕も痛手を被るが、君の被る痛手の方が大きいのだから、僕の条件を飲むべきだ」という交渉が成立するからです。

 トランプ氏は不動産王ですから、交渉事は上手なはずです。ブラフ戦略(はったり戦略)も場合によっては使って来るかもしれません。トランプ氏は既に、「日本が費用を払わないなら、米軍は撤退する」と発言しています。これがブラフなのか本気なのか。

 それに対して、日本としては、動揺せずに、「どうぞ御自由に」と答えてみるのはいかがでしょうか。「日本から撤退したら、米国はアジア地域に兵力を展開できなくなり、南シナ海での中国の横暴を阻止できなくなるが、それでも良いのか?」と言ってみるのです。米国としては、「米軍が撤退した後の日本の防衛は大丈夫か?」と聞いてくるでしょう。それに対しては、二つの答え方があります。

 一つは、「いかなる手段を用いても、日本の国土は自分で守る決意である」と答えることです。実際には日本が自分で国土を守ることは困難ですが、核軍備の可能性をほのめかすだけでも、米国がビビッて折れて来るかも知れません。もっとも、米国側に「日本が自主防衛など出来るはずがない」と読み切られて敗退する可能性の方が遥かに高いので、これは賢い戦略とは言い難いでしょう。

 今一つは、「米軍が撤退しても、日本は米国の核の傘の下にいるから大丈夫だ。どこかの国が日本に攻めてきたら、米国の核ミサイルが当該国を成敗してくれるからだ」というものです。「日本は、米国の忠実な子分である。その日本が敵国に攻撃された際に米国がこれを守らなければ、他の同盟国が米国を信頼しなくなり、米国から離れていくだろう。そんな事態に米国が耐えられるはずがない」と言うのです。こちらの方が勝算はありそうです。

 以上、色々と頭の体操をしてきましたが、決定的に重要なのは、トランプ氏が米国を「世界の警察官」と位置付けるのか、「孤立主義」を採用してアジアや中東等々への興味を失うのか、ということでしょう。それが見えた時に、こうした議論が現実味を帯びて来るのでしょう。その時のために、様々なシナリオを用意して対応策を検討しておくべきなのでしょうね。

  
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