ネットオークションの買い手が、「売り手が詐欺師だったらどうしよう」と考えたら、オークションが成立しません。売り手は自分が正直であることを知っていても、買い手にそれを知らせるのは意外と大変なので、売りたいものも売れないのです。このように、当事者の一方が知っている情報を他方が知らない場合、正直者が損をする可能性があります。「情報の非対称性」がもたらす問題です。今回は、こうした可能性について考えてみましょう。
ネットオークションは、売り手の評判が買い手に見える仕組みが重要
ネットオークションの場合には、正直な売り手は「商品を受け取ってから代金をお支払いください」と言うことで、自分の正直さを相手にアピール出来ます。しかし、今度は買い手が嘘つきで、代金を払ってこない可能性が出て来ます。今度は買い手が売り手に自分の正直を信じてもらうのが大変です。
そこで、多くのネットオークション会社は、売り手ごとに、過去の買い手から評判を聞いて、ランク付けをしているようです。そうすれば、1度は偽物を売り付けることが出来ても、2度目からは買い手がつかなくなりますから、市場から排除されていき、正直者だけが残って市場で取引することになるでしょう。問題は、正直者が始めて出品する時に、どうやって買い手を信じさせるか、ということですね。それについては、売り手を直接知っている人に買い手になってもらい、評判を書き込んでもらう、といった工夫が必要かもしれません。
中古車のように一度限りの取引だと、仲介者の関与が必要になる
中古車の性能は、売り手は知っていますが、買い手にはわかりません。たとえば買い手が「中程度の性能の中古車に相応しい値段」の売り物を物色するとします。しかし、その価格帯には「上性能の中古車」はありません。中性能と低性能の中古車が入り交じっています。
ということは、運が良ければ値段通りの性能の中古車が手に入りますが、運が悪いと値段に見合わない低性能車が来てしまいます。それでは買う気になりません。そこで、物色の価格帯を「中性能車と低性能車の適正価格の平均」にまで下げることにします。そうすると、そこには中性能車は並んでいないので、低性能車だけが並んでいることになります。それなら「低性能車に相応しい価格で低性能車を買う」しかありませんね。
これは、買い手にとっても正直な売り手にとっても大変困った状況です。しかし、当事者がこの問題を解決するのは容易ではありません。そこで、仲介業者の出番となります。
プロの仲介業者が十分に性能をチェックして、正当な価格で買い取り、それを売りに出せば良いのです。買い手は、プロの仲介業者なら信用するでしょう。それは、一般人の売り手と異なり、プロの仲介業者は明日からも取引を続けていく必要があるため、嘘をついて評判を落とすわけに行かないからです。