今年もいろんな方がインタビューに協力してくれた当コーナー。その中のおふたりに年末年始の暇を持て余しがちなこの時期にオススメの本を「年末年始に読みたい1冊」と題して紹介していただきました。
最初は『移民大国アメリカ』(ちくま新書)を刊行した成蹊大学法学部の西山隆行教授にアメリカに関する本を3冊。
続いて『歌舞伎町はなぜ〈ぼったくり〉がなくならないのか』(イースト新書)を刊行した首都大学東京都市環境科学研究科特任助教の武岡暢氏に小説、ノンフィクション、専門書の3冊を紹介して頂きました。
(西山先生)
今年5月27日に、バラク・オバマ大統領が現職大統領としては初めて広島を訪問し、平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花しました。また、今月安倍首相はオバマ大統領と共に、日米開戦の発端となった真珠湾を訪れる意向を示しました。この2つの出来事は、オバマ政権の大きな業績として今後語り継がれることでしょう。
そこで1冊目に選んだのはジャーナリストの松尾文夫氏『オバマ大統領がヒロシマに献花する日』(小学館101新書)です。内容は、松尾氏自身の戦争体験や、様々な歴史的な問題が紹介されていて、そういった知識を身につける上で非常に有益ですが、その中でも注目ポイントの1つが「相互献花外交」。これは簡単に言えば、かつて戦火を交えた国同士が、お花を手向け和解に繋げる外交です。
普段、大学で第2次世界大戦について学生と話をすると「謝罪をしろと言われてもピンと来ない」という声を耳にします。学生からすれば、まだ生まれていない、結果に影響を及ぼすことが出来なかった第2次世界大戦という出来事に対し、心から謝罪することは非常に難しいと感じるようです。また、政府が外交で謝罪するとなれば反対する声も当然あがります。
しかし、心から謝罪出来ないと感じている学生でも、悲惨な出来事が起こった場所で、亡くなった方々に個別に想いを馳せ、花を手向けるのは可能です。国内で、戦争問題となると謝罪するかどうかという議論にとなりがちですが、この本と普段の学生との話から、献花という別の観点からの問題提起が示唆に富んでいると考えました。