2024年7月15日(月)

Wedge REPORT

2010年4月23日

──なぜ、そのようなことになってしまったのでしょうか?

片桐氏:道路公団の民営化というのは、小泉純一郎元首相の時代に行財政改革の一環として行われましたが、その民営化論議の際に、道路公団の問題とは何かをはっきりしていなかったことが原因です。そもそも民営化は手段であって目的ではありません。「何のための民営化なのか?」という視点が欠けていたんです。それまで政治家がいいように官僚に命じて、官僚も借金を先送りしながらどんどん道路を造ったために、(40兆円もの)膨大な借金が溜まっていたわけです。だから、政治の介入を排除して道路を政治の玩具にさせないことが民営化だろうと僕らは思いました。

 ところが、自民党の道路族や腰砕けになった小泉さん、提灯持ちになった一部の関係者たちは、民営化とは「借金を返して、料金を下げることだ」と、問題をすり替えてしまったんです。それで税金を遣って料金を下げ、借金も計画上では45年後に返せることになってます。でも、そんなことは公団のままでもできたことです。

──45年後までに返済すればいいというのは、「償還主義」と呼ばれる仕組みですよね。45年後というと、ずいぶん遠い先のように感じますが、この数字には何か根拠があるのでしょうか?

片桐氏:これこそ妥協の産物です。有料道路の建設費の返済期間というのは最初、原則30年だったんです。30年というのはだいたい一世代ですね。10年や20年ではあまりにも負担が重過ぎるから、30年ぐらいにしておこうと始まったんですけど、だんだん苦しくなってきたんですよ。30年で返そうとすると料金が非常に高くなってしまい返せそうもないとなって、徐々に伸びていったんです。民営化が始まる直前の段階では50年になっちゃってた。

 で、民営化する以上は成果が必要だから、最初10年短縮して40年にしようと言ってたんだけども、いろんな妥協の中で5年短縮して45年になった。それだけの話です。はっきり言えるのは、誰も実感できないほど遠い先の話にしてしまったということです。

──高速道路会社が保有債務返済機構に支払うリース代というのは、どのように決められるのでしょうか?

片桐氏:45年間で全額返せることを前提にリース代を設定します。45年後に交通量がどれだけ増えるかを含めて推測するわけですが、実際には検証などできないわけですよ。来年のことさえわからないのに、45年も先の事なんかどうしてわかるのかと。例えば、昭和26年か27年の時に、国鉄があと20年でダメになるとは誰も思っていなかった。今後このようなパーソナルな移動形態が何年間続くかなんて、誰にもわかんないと思いますね。

──ということは、45年という長期スパンで借金を返せばいいという仕組みを残したことが、大きな間違いだったということですか?

片桐氏:そういうことです。逆に言えば、それが道路公団方式のメリットだったわけです。今、赤字か黒字かって判断をしなくて済むわけで、当時は「50年後に借金がなくなりますよ」って言えば、責任がなくなったんです。だからこそ、政治の介入を排除して、さらに毎年度ちゃんと決算を出すことで、今年の経営がうまくいったかどうかを検証できる仕組みにしなければいけなかった。その2つが(本来あるべき)民営化の両輪だった、と僕は今でも思っています。

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