業界の草分け、日動画廊の創業者がゆかりの地に開設しました。
なだらかな丘陵地に、企画展示館、フランス館、日本館と、三つの建物が建ち、
豊かに広がる緑や彫刻庭園が、芸術保護区といった趣をかもしています。
日動画廊は洋画商の代表格だ。日本の古美術の画商ははるか昔からあるのだろうが、近代洋画、つまり油絵の画商としては、日動画廊は日本の草分けである。しかもその画廊が東京の表舞台の銀座にあって、その名前に「日動(=日本動産)」という経済の重みを含んでいるので、画商といえばまず日動画廊が頭に浮かぶ。
それだけに、若いころはむしろ背中で見ていた。若者はどうしても原理主義だ。貧しくて金が欲しいのに、頭の先っぽでは純粋を求める。だから絵を商品として壁一面に並べた光景は、何か不純なものと見てしまう。
でもいまは違うだろう。いまの若者は金を世の中の核の一つとして目の前に見ている。表現も一つの企業としての営業意識をもっている。それだけに、その背中で何を見ているのか、とても気になるところだ。
笠間日動美術館は、茨城県の笠間にある。これは美術館だから、商品世界からはとりあえず切り離された、芸術保護区である。画商のコレクションというと、その保護区をめぐる感情のところに興味が湧く。以前、中古カメラのコレクターがいて、好きが高じてとうとう店を開いた。でも商いとなると、その感情が邪魔をする。好きだからといって全部囲っていると、仕事にならない。店をやるためには、好きなものもどんどん流れるようにしないといけない。それが商いというものらしい。