2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2017年2月13日

 ペレスが一度目の会長職に就いた00年当時、レアルは総額2億300万ユーロ(約250億円)もの負債を抱え、危機的な財政状況に陥っていたという。ペレスはマーチャンダイジング権や選手肖像権などの一部を売却したほか、マドリード中心地の広大な練習場も自治体に売り、調達した資金で負債を完済したうえ、ジネディーヌ・ジダンやデイビッド・ベッカムといったスター選手を次々と獲得していった。“銀河系軍団”となったレアルの人気は欧州のみならず北米やアジアにまで波及。

 海外市場の開拓とPRを兼ねて、プレシーズンに日本をはじめ韓国、中国、アメリカなどの国々を転戦して親善試合を行うワールドツアーを実施して、グッズ販売などで莫大な収益を手にしたという。「金を生むには金を使わなければならない」というモットーのもと歯車を回し始めた結果、世界一のクラブという現在の地位は築かれたのだ。

 さらに建設界の大物らしく、スタジアムの再開発にも注力した。VIPゾーンやボックスシート、レストランなどを次々とリニューアルし、同国最大規模というサッカーショップも設置してホームスタジアム「サンチャゴ・ベルナベウ」は大きく変貌を遂げた。06年、成績不振の責任をとって会長を一度は辞職したが、09年に復帰すると、改革は第2フェーズへ。ショッピングセンターの拡大やスタジアムに直接アクセスできるホテルの建設などを含む周辺地区再編計画が現在も進行中だ。

 レアルとともに欧州サッカーの双璧をなすバルサもまた、ビジネスセンスに長けた経営者がクラブを蘇らせた過去がある。

 それが03年から副会長を務めたフェラン・ソリアーノだ。MBA取得後、起業家、経営コンサルタントとして国際的に活躍していたフェランはバルサ副会長就任時、「世界最高のサッカーと世界最高の経営」というゴールを掲げ、放漫経営によって赤字に陥っていたバルサの財政基盤強化に着手。ロナウジーニョの獲得によって“プロダクト(商品)”たるチームの魅力を上げるとともに、多岐にわたる改革をいっきに推し進めた。たとえばスタジアムに関しては、治安対策や企業向けのVIPシートの設置、購入意欲の高い観光客向けに値段を高めに設定したチケットを用意するなどした。国内放映権契約の見直しに加え、海外の放送局に対する営業の強化によってクラブの国際化を図り、多数の外部企業に運営を委託していたマーケティング権をクラブの管理下に置いてマーケティングチームを発足させたりもしている。

FCバルセロナを黒字化させたフェラン・ソリアーノ副会長(当時、右)
(写真・AFLO)

 こうして、着任当時には年間7300万ユーロもの赤字を計上していたバルサは、5年後には2000万ユーロの黒字を出せるまでになった。フェランはスペインの航空会社会長を経て、現在は英プレミアリーグ・マンチェスターシティのCEOなどを務めている。


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