2024年12月23日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2016年10月27日

 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、8月に就任した小池百合子都知事の下、費用や各競技の開催地を巡り見直しや議論が盛んに行われている。果たしてオリンピックは無事に開催出来るのか。

 3兆円超との試算もある巨大化するオリンピックはどのような方向性に向かっているのか。またそもそもオリンピックとはどのような大会なのか。2回目の開催となる東京はどのような役割を担うべきなのか。『東京オリンピック 「問題」の核心は何か』(集英社)を上梓したスポーツライターの小川勝氏に話を聞いた。

――まず、オリンピックは各競技の世界大会と同じく、その競技の世界一を決定する大会なのかという疑問があります。

小川:1952年~72年までIOCの会長だったアベリー・ブランデージは、自伝の中で「オリンピックの目的は世界一を決めることではなく、オリンピックルールに従った世界一を決めること」と書いています。本来、オリンピックは各競技の世界選手権とは本質的に違うものでなければなりません。

 近代オリンピックの創設者であるクーベルタン男爵は、若者の教育に特に関心のある教育者でした。彼は若者をどうすれば成長させられるか、向上させられるかと考える中で、スポーツが有効であると考えました。

 オリンピック憲章の「オリンピズムの根本原則」のはじめには「オリンピズムは肉体と意志と精神のすべての資質を高め、バランスよく結合させる生き方の哲学である」と書かれており、開催目的としてこのオリンピズムへの奉仕を掲げています。

 またオリンピズムの定義では、平和主義と差別行為の禁止といった態度をスポーツを通して養うこと、こうした原則をオリンピックを通して伝えていくことが開催する意義なのです。このオリンピズムを世界に広める運動をオリンピック・ムーブメントと言います。

 また、オリンピックは招待大会であるため、オリンピックの度に、各国のオリンピック委員会に、国際オリンピック委員会から招待状が届く。つまり、オリンピックはオリンピックルールに従う人たちの世界一を決める大会なんです。ですから、招待状が届かなければ、いくら強くても参加すら出来ない。


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