2022年12月2日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2016年10月27日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――そこまで各スポーツ団体がオリンピック競技を希望する理由とはなんでしょうか?

小川:正式競技になれるかどうかでまず大きく変わるのが金銭面ですね。

 正式競技になればIOCから企業スポンサーや放映権料の分配金があります。また、日本のように正式競技になれば、文科省から補助金が出るというように政府からの補助金などにより非常に収入が増えます。

 もう1つ大きいのがオリンピック開催時にメディアに取り上げられる回数が増えるため普及が進むことです。いわゆるマイナーな競技にとって、一般の人達にルールを覚えてもらうのは重要なことで、ルールが分からないと試合を見てもなかなか興味を持てませんからね。その土台を作れるのは正式競技になる大きなプラス面ですね。

 正式競技にするかどうかを決めるのはIOCの人達ですから、様々なスポーツ団体から政治的な圧力を受けているでしょう。それにノーと言えたのがジャック・ロゲで、バッハは一定の縛りをかけているとは言え持続可能路線をはっきり示す人ではなかったということです。

――最後に、私は東京都民なのですが、開催都市の人間として巨大化するオリンピックに対し、何か出来ることはありますか?

小川:IOCは、誰かから税金を集めているわけではありません。国際的な任意団体なので、この組織に対しモノを言える立場の人はほとんどいません。そうした中でモノを言える立場なのは、まず選手と、IOCはスイスで法人格を取得しているのでスイス国民。そして開催都市の住民です。開催都市の協力なくしてオリンピックは開催出来ませんから、IOCや大会組織委員会、開催主体である東京都に対し都民にはモノを言って欲しいですね。

 現在の東京オリンピックの「開催費用」について、都の調査チームは3兆円を超える可能性もあるという報告書を出しています。東京都の税金で作る新規の競技場は前回と比べ少なく、既存の競技場を借りて開催します。運営に係る費用で言えば、その既存の競技場や練習会場の借り上げ、さらに仮説施設の建設などが、28競技以上に増えたことで膨れ上がります。

 中でも、運営費の中で大きな割合を占めるのが警備費用。例えば競技会場の出入りなどのいくつかの警備は民間の警備会社に依頼することになっています。こうした運営費に関しては、大会組織委員会がIOCから分配してもらったお金や、国内での企業スポンサー契約や、チケットの売上などから賄うことになっていますが、現状ではどうやら足りそうもありません。そうなると、都の税金をつぎ込むことは招致段階で決定しています。そうなると運営に関しても都民もモノを言える立場になります。

――ただ、実際どのように意見を伝えれば良いのか分からない人も多いと思います。

小川:東京都や組織委員会へSNSを通じて意見を伝えることも出来ますが、本筋であるべきは東京都議会で議論をしてもらうこと。地元の都議会議員に「この問題はどうなっているのか」「都議会で議論して情報公開をしてください」「こういう方法でやれば運営費を下げられます」と伝えることです。来年には東京都議会選挙がありますから、議員さんも熱心に話を聞いてくれるでしょう。そうして提案したことが都議会の議論に反映されれば非常に価値のあることだと思いますね。

 確かに、新国立競技場問題にしてもなかなか情報公開は進みませんでしたが、それを突破口としてどんどん情報が公開された例もあります。いかに議論を活性化するかが重要ではないでしょうか。

 自国開催のオリンピックはそうそうあるものではありません。だから、お金のことなんて気にしないでやってしまおうと思ってしまいがちですが、そう思っている限り持続可能なオリンピックを示すことは出来ません。2度目のオリンピックを開催する東京だからこそ、赤字も無駄なインフラも作らなかった、開催して意義があったと都民やIOCが思えるようになれば、と思います。
 

  
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