2022年11月29日(火)

オトナの教養 週末の一冊

2016年10月27日

»著者プロフィール
著者
閉じる

本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――様々な競技を行うための競技場建設を巡っては現在もカヌー、ボート競技の会場予定地である海の森水上競技場は環境や大会後の使用方法などを巡って議論されています。そこで宮城県の長沼や前回の東京オリンピックで使用した埼玉県の戸田などを整備して使用するのはどうかという案が浮上しています。

小川:例えば前回のリオや北京のような新興国で開催するならば、インフラも整備途上でしょうから、多少公共投資を大胆に行っても長期的に見れば良い投資になるかもしれません。

 敗戦からの復興の途上にあった日本で行われた1964年の東京オリンピックも公共投資で様々なものを整備しました。しかし国の税金で作った代々木第一体育館、第二体育館、日本武道館というスポーツ施設は、50年以上経った現在でも毎日のように使用されています。ただし、武道館は一部寄付金も使われています。いずれにしろ、現在でもこれだけ使用されていれば税金の無駄遣いとはならず、長期的に見れば良かったのではないでしょうか。

 しかし、2020年の東京オリンピックは2回目で、無駄な公共投資が生まれやすい。だからこそ、工夫が必要で、2回目のオリンピックをうまく運営出来ればオリンピックはまだまだ持続可能であることを示せると思うんですよね。

――2012年ロンドンオリンピックの際、小川さんのご著書『オリンピックと商業主義』のインタビューをしました(過去記事参照)。その時に、ロンドンは競技場などに工夫を凝らし、持続可能な大会を目指しているという話でした。この方向性は現在どうなっているのでしょうか?

小川:当時のIOC会長だったジャック・ロゲは持続可能性に関心があり、00年のシドニー、04年のアテネ、08年の北京大会のあと、12年のロンドン五輪では競技数を2つ減らし26競技としました。彼の基本的な考えは、オリンピックは26競技を基本とし、そこに開催都市が大規模なインフラ投資を行なわなくても出来る2つの競技を加えても良いというものでした。

 また、競技会場についても水泳会場だったロンドンのアクティクス・センターは期間中の収容人数を1万7500人、開催後は2500人になるような構造に設計しました。

 しかし、現在のIOC会長トーマス・バッハの考えは、競技数ではなく種目数で制限しようということで、リオでは28競技306種目となりました。加えて、開催都市が開催可能であれば東京オリンピックのように、競技を追加してもいいという規則に変わりました。

 こうした背景からジャック・ロゲ路線であれば、東京でも持続可能な大会にしやすかった。もちろんトーマス・バッハもあまりに巨大化するのは良くないとは思ってはいるんです。しかし、オリンピック競技になりたいというスポーツ団体は後を絶ちません。要するに現在の28競技と決まっている枠の中で、スポーツ界における政治的な争いになっているんです。

新着記事

»もっと見る