2022年10月6日(木)

Wedge REPORT

2017年2月13日

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並木裕太 (なみき・ゆうた)

フィールドマネージメント代表取締役

慶應義塾大学経済学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。ペンシルバニア大学ウォートン校でMBA取得。2009年にフィールドマネージメントを設立。Jリーグの理事も務める。

 世界のトップと日本のクラブになぜここまでの格差が生じているかといえば、その根本要因はクラブの経営構造の違いにある。Jリーグのほとんどのクラブは、責任企業(事実上の親会社)の“財布”によって経営を成立させている。90年代はじめのJリーグ発足時、かつての実業団チームは衣替えをし、企業名を外した名前でリーグに加盟したが、その経営のバックボーンの本質が大きく変化したわけではない。鹿島の前身は住友金属工業(現・新日鐵住金)のサッカー部であり、今も同社がクラブの主要株主だ。

 クラブの経営を維持するため、広告宣伝費などの名目で責任企業から損失補てんを受けることが常態化しているが、一部の企業では自社の経営環境悪化などを理由にクラブへの支出を削減する動きも見られるという。

 仮に、ある責任企業が10億円の予算をクラブに対して用意しているとする。そのクラブが経営努力により新規スポンサーを獲得し3億円の売上を上積みしたとすると、責任企業はクラブへの予算を7億円に減らす意思決定をする可能性がある。つまり経営努力もむなしくクラブのビジネス規模は拡大しない――。こうした経営構造となっている限り、Jリーグのクラブが現状の延長線上で爆発的な成長曲線を描くことは難しいのではないかと考えている。

 親会社からの経営者の出向や赤字補てんを含む予算管理の結果、Jリーグは当初の10クラブから現在の53クラブまでクラブ数は増えたものの全体のパイは1.5倍(約1000億円→約1500億円)にとどまる。これは日本のプロ野球も同じ構造で、ここ20年ほどで4倍以上に収益を伸ばしたメジャーリーグ(MLB)とは対照的に、目立った成長を遂げることができずにいる。

「社員の一体感醸成」等を目的にスポーツチームに資金を提供している企業もあるため、親会社依存のチームがあるのはもちろん構わないが、独立健全経営を目指すチームがもっとあってもよいのではないだろうか。そういうチームこそが将来、レアルを倒す存在になり得ると考えている。

根拠なき大物選手獲得はバクチ
必要なのは資金を増やせるビジネスマン

 世界のトップに君臨する欧米の主たるプロスポーツは着実に経営基盤を拡大させてきた。チームを運営する企業は完全なる独立採算が当たり前。ビジネス面の発展という目標を共有するリーグ(機構)と手をたずさえながら、合理的なシステムを構築している。

 欧米のいわゆるリーグビジネスの手法に日本のスポーツ界が学ぶべきところは多い。特に、全国ネット放映権や球場外でのグッズ販売などを一括管理したうえでその収益金をチームに再分配するとともに、総年俸の上限額を設定するサラリーキャップ制を導入して戦力均衡を図るなどしているMLBは、チームビジネス頼みで全体最適の視点を構造的にもちにくい日本プロ野球機構(NPB)と比べ、急速に成長した。

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