2016年の日本映画界は、非常に活況に満ちた一年となった。
2015年に続いて興行成績は好調を維持し続け、結果的に過去最高を記録した。さらに2010年代を代表するかのような3本の映画も登場した。『君の名は。』、『シン・ゴジラ』、そして『この世界の片隅に』だ。先に結論だけ述べておけば、この3本は「ポスト3.11の時代」を象徴する映画だった。
本論では、全体の情況を確認しながら、この3本を中心として2016年の日本映画を考察していく。
飛躍の可能性がうかがえる日本映画界
本題に入る前に、映画界全体の動向を押さえておこう。
映画はしばしば斜陽産業だと見なされるが、それは誤った認識だ。90年代中期に最低迷期を迎えた日本映画界は、21世紀に入って回復した。1981~2000年と2001~2016年の両期間を比較すると、総興行収入は平均1685億円から2039億円に、入場者数は平均1億4291万人から1億6329万人にまで増えた。こうした変化の要因を両時期の差異から導くならば、シネコン(複合型映画館)の浸透や、テレビ局や出版社などメディア異業種の参入、そしてアニメ人気が挙げられる。
具体的に振り返ると、2010年に総興行収入が2207億円と当時の過去最高を記録した。しかし、翌11年は(東日本大震災の影響もあったが)1812億円と約400億円のマイナスと、過去15年で最低の数字となった。統計学的には、これは「平均への回帰」を示す現象だと考えられる。つまり、21世紀に入って復調したものの15年ほどは大きな変化はなかった。
しかし、2015年と16年の2年間だけを見れば、産業的には飛躍の可能性がうかがえる。なぜなら、2016年の総興行収入は、2010年を大幅に上回る過去最高の2355億円となったからだ。2015年が歴代3位の2171億円だったことを踏まえると、(消費税増税の影響を含めても)映画館に多くの観客が足を運ぶ活況が2年続いたと言える。今年もこの調子が続けば、映画産業は新たな成長段階に入ったと考えてもいいかもしれない。