経営者の方からよくいただく相談の中に「うちの社員は、言った事しかやらないんだよね」があります。お話を聞かせていただくと、
「社長! それは、言ったことしかやらない社員を育ててしまっているんですよ」
という結果に落ち着くことが大変多いです。では、経営者の方が陥りがちな、言った事しかやらない社員を育ててしまう3つの「悪」とは何か。
「なんでわかってくれないんだ…!」
「くれない、くれない、くれない…!」
経営者のお気持ちはよく理解できますが、原因を考えてみましょう。
経営者が陥りがちな3つの「悪」
- 任せる組織風土がない。
- 相談する場を作らない。
- 朝令暮改的な指示を改めない。
1.任せる組織風土がない
▼組織の症状
この仕事は何のためにあるのか。どこを目指せば良いのか、どうなるとゴールで、どうなるとダメなのか。そのあたりが伝わっておらず、指示をもらえたこと以外に対してどう判断すれば良いかわからないため、行動に移すことができない。
また、社員は、そもそも任せてもらえていない。と認識しているケースも多く、
「この段階までは君の判断で進めて欲しい」
「この先は君に任せたよ」
という、信頼されている安心感が組織の間に無いため、自分の中で判断できる一番内側の範囲から外に飛び出すことが出来ないでいます。業務分担・承認フローがあいまいな状態の組織によく見られる傾向です。
▼解決策(理念/方針の浸透と、社員間のより深い信頼関係の醸成)
一つの仕事に対する意図/目的もそうですが、大元に振り返り、そもそもの会社の存在理由である理念、会社方針や今期の計画、部署のビジョン、今回のプロジェクト、依頼している仕事の部分はどこか、なぜ依頼しているか、どこがゴールで、どうなれば失敗なのか。
上司にとっては当たり前のことでも、部下からするとわからないことも多く、また、わからないままが続くと、わからないままが部下にとっての当たり前になってしまいます。毎回説明するのが大変な場合は、よく使う資料として用意しておくことで、何度も見て聞く内に意図/目的の大切さ、意義や価値が伝わり、部下に判断力が備わってきます。
また、どこまで任せるか、任せないかというテクニカルな視点から、部下とどれぐらい信頼関係が作れているのか、どうすればもっと信頼関係を深められるのか、というところに視点を移し部下が仕事の中で大切にしていることは何か、そこにどんな協力ができるか。
部下の特性について知り、上司の特性についても話し、お互いの違いを知り、お互いを活かし合うことについて議論をする(様々な自己分析ツールが役立ちます、無償でもインターネットで公開されています)。お互いを深く知ることで、安心感が生まれ、信頼関係が深まり、部下が判断できることの範囲が広がり、任せられることも加速的に増えていきます。経営者自身がそういった組織風土作りを強く求めることが益々大切な時代になってきているように思います。