2024年4月20日(土)

ベストセラーで読むアメリカ

2010年5月18日

 The first was the Mizuho Financial Group, a trading arm of Japan’s second biggest bank. As a people, the Japanese had been bewildered by these new American financial creations, and steered clear of them. Mizuho Financial Group, for some reason that would remain known only to itself, set itself up as a clever trader of U.S. subprime bonds, and took $1 billion in subprime-backed CDOs off Morgan Stanley’s hands.
  The other, bigger, buyer was UBS -----which took $2 billion in Howie Hubler’s triple-A CDOs, along with a couple of hundred million dollars’ worth of his short position in triple-B-rated bonds. (p215-216)

 「1社目は、みずほフィナシャルグループ(FG)だった。日本で2番目に大きな銀行グループの証券会社だ(評者注、みずほFGとみずほ証券を混同?)。日本人は、これらアメリカの新しい金融商品に戸惑い、投資を避けていた。彼らにしか分からない理由で、みずほフィナンシャルグループは、自分たちのことをアメリカのサブプライムローン関連債券の優れたトレーダーだと評価し、サブプライムローンを裏付けとする債券(CDO)をモルガン・スタンレーから10億ドル買い取った。
  2社目は、もっと大きな買い手で、UBSだった。(モルガン・スタンレーのトレーダーの)ハウイー・ハブラーのトリプルAのCDOを20億ドル買ったうえ、ついでに、トリプルBの債券の空売りのポジションも数億ドル分引き取った」

 住宅バブルの最終局面で、紙くずになる債券に手を出す金融機関のリスク管理も考え物だが、とにかく他人に損失を押しつけようというウォール街のカルチャーにも驚かされる。

 本書の筆者マイケル・ルイスは結びで、ウォール街の投資銀行が株式を上場したことで、無責任に過大な投資リスクをとる傾向が助長されたと分析する。社員が自分のお金を出資して経営するパートナーシップ形態をとった古き良きウォール街と異なり、多くの株主が資金を出資する上場会社となった今は、投資銀行の経営者たちは他人のカネでギャンブルをやっているだけで、しかも自らの懐は痛まない。そこに問題があるという。

 アメリカの読者にとっては、サブプライム危機でなぜ金融システムが危機に瀕したのかをよく理解できる一書であると同時に、ますますウォール街に対する不信感を高める結果にもなるノンフィクションだ。

 

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