2024年12月22日(日)

韓国の「読み方」

2017年3月6日

周囲の反応を気にする脱北者たち

 脱北者の証言はオーバーなものになることが多い。証言を重ねるたびに細かい部分で食い違いを見せたり、あるいはディテールがどんどん肉付けされたりしていくこともある。

 平岩俊司・関西学院大教授は、坂井隆・元公安調査庁調査第2部長との対談をまとめた共著『独裁国家・北朝鮮の実像』(朝日新聞出版)で、「北朝鮮では人肉が市場に出回っている」という話が出た時に「自分も食べた」と証言した脱北者の話を紹介している。関係者が後で確認すると、この脱北者は実際にはそうした話を聞いたことがあるだけ。「インパクトがあると思った」ので、自分も食べたと話したということだった。

 坂井氏は「サービス精神なんだ(笑)」と受けているが、まさにそうなのだろう。自らの生まれ育った体制を裏切って韓国に来ているという境遇は、心細いもののはずだ。どうしても周囲の反応を気にせざるをえないのは、人間として当然だろう。だから周囲の期待に応えようと、ついオーバーな話にしてしまうことがある。それを、私たちが簡単に批判できるものだろうか。

 テ・ヨンホ元公使の証言にしても、礒﨑准教授の指摘するように信頼度の高そうな部分はある。大事なのは、彼らの証言を聞く側の姿勢だ。礒﨑准教授は「彼の証言には参考となるものも多いが、金正恩委員長に関する情報など現段階でクロスチェックが難しい情報は慎重に接するべきだろう」と話す。面白いからと飛びつくと、やけどするのが落ちである。

  
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