トランプホワイトハウスの集団力学
ホワイトハウスには3つのグループが存在し、主導権を巡りそれぞれが綱引きをしています(図表)。
第1グループは、スティーブン・バノン大統領首席補佐官兼上級顧問を中心にした極右派です。このグループは「経済ナショナリズム」を信条とし、多国間貿易は米国に不利益を与えるので2国間貿易を強く支持しています。
さらに、政治家や主要メディアを含めたエスタブリッシュメント(既存の支配層)を非難しています。主要メディアはフェイク(偽)であり、それに対抗する極右サイト「ブライトバート・ニュース」が真実であるというのです。
それに加えて、バノングループは多文化主義に懐疑的で異文化を排除する傾向があります。反イスラム教徒、反メキシコ系並びに反ユダヤ系で、国境の安全保障問題を利用して白人キリスト教徒の社会を復活させようとしているのではないかと見られています。
もう一つバノングループの特徴を挙げれば、反エリートです。殊に東海岸の金融街及び西海岸のIT企業で働くエリート層を敵とみなしています。バノングループは政党がオハイオ州やミシガン州などの中西部に住む一般的な米国人の利益ではなく、両海岸に住むエリート層のそれを代表していると捉えているのです。
次に第2グループです。第2グループは、トランプ大統領の娘婿で厳格なユダヤ教徒であるジャレッド・クシュナー上級顧問のグループです。このグループには、クシュナー氏がトランプ大統領に推薦したゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長やスティーブン・ムニューチン財務長官など米金融大手ゴールドマン・サックスの元幹部が含まれています。このグループの特徴は、穏健でビジネス志向が強い点にあります。
第3グループは、共和党主流派です。このグループは自由貿易及び多国間貿易を重視しており、バノングループとの間に相違性があります。ペンス副大統領及びラインス・プリーバス大統領首席補佐官がグループに入っています。彼らは議会とのパイプを持っているため、トランプ大統領は議会との調整を期待しています。
ところが、プリーバス氏はホワイトハウスでの生き残りをかけて、バノン氏に接近していると一部の米メディアは報じています。実質、バノン氏とクシュナー氏の2つのグループに分類されるというのです。ホワイトハウスにおけるペンス副大統領の影響力は、バノングループと比較すると低下しているのです。