2024年7月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年5月9日

 本年3月に行われた香港の行政長官選挙において、新たに選任された林鄭氏が中国政府の「傀儡」であることを指摘するワシントンポスト紙の社説です。そして、「雨傘運動」が弾圧されて以降の中国政府の香港への締め付けはますます強化されつつあるが、それは逆に、香港における反中派の支持を増やしつつある、と述べています。

 香港が英国から中国に返還されて約20年が経ちますが、返還時に公約となった「一国二制度」という言葉自体がすでに死語となりつつあるというのが、今日の実態でしょう。活動家の逮捕、出版関係者やビジネスマンたちの拉致の状況を、多くの香港の人々は半ば諦めの気持ちで眺めているようですが、他方、一部の人たちの間では中国からの完全な分離を望む感情が高まりつつあるように見えます。

香港人であり、中国人ではない

 香港でとられた最近のアンケートでは、行政長官選挙で支持率が最も高かったのは林鄭氏以外の人物であったこと、自分は「香港人であり、中国人ではない」という人々の割合が急上昇していること、などが注目されました。

 このように「一国二制度」が無視された香港の状況をつぶさに観察している台湾人にとっては、中国との統一という選択肢はますます遠ざかりつつあると言わざるをえないでしょう。

 トランプ政権がこのような香港の状況にいかに対処しようとしているか、という点について、ワシントンポスト紙の社説は、トランプ政権が、直接的な利害関係を重視しつつも、自由、民主、人権などの普遍的価値に対し、鈍い反応しか示していないことに注意を喚起しています。たしかに、香港をめぐる諸問題が、今回の米中首脳会談で取り上げられるほど優先度が高いとは思えません。しかし、長期的に見て、米国が中国に対峙する場合、基本的価値に対する諸問題の議論は避けては通れない課題となるにちがいありません。

  
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