3月26日に行われた香港行政長官選挙で、前政務官で親中派の林鄭氏が勝利したことについて、3月29日付のワシントンポスト紙は、その背後に中国政府の介入があるのは明らかだが、トランプ政権は民主主義の尊重に関心がなく、中国に足下を見られているとの社説を掲載しています。要旨は以下の通りです。
中国共産党指導部は、最近本土でやっているのと同じような残忍かつ非妥協的な圧力によって、香港の反対派を抑え込めると見たようである。3月26日に行われた選挙では、北京によってコントロールされた定員1200人あまりの選挙委員会による投票で、強硬派の官僚が行政長官に選ばれた。勝利した林鄭氏は他の候補よりも支持率が低かったという世論調査は無視された。
翌日、香港における習近平の代理人たる警察は、2014年に自由選挙を求めて大規模デモを主導した活動家9人を逮捕すると発表した。これは香港が約束した「一国二制度」の下、言論と集会の自由が保証された都市で行われた露骨な取締りであり、もはや民主化運動が容認されないという兆候を示している。
過去に何度も繰り返されているように、こうした弾圧は裏目に出る可能性が高い。香港中枢を75日間にわたって麻痺させた2014年の「雨傘運動」は、普通選挙権を与えるという約束を反故にした選挙計画に対して行われた。
雨傘運動が弾圧されて以降、中国政府は出版者やビジネスマンを拉致するなど再三香港の自治を侵害する一方、穏健な反対派との妥協を拒んできた。その結果、中国からの完全な分離を望む感情が高まっている。昨年秋の議会選挙で選出された6人の野党候補には、若手の独立支持派が含まれている。中国政府は、うち2人が議席を得るのを妨害し、今矛先は残りの4人に向かっている。
新たな大規模デモが起きるかどうかにかかわらず、強硬路線を続けることは、独立支持派を含め、反中派への支持を増やす可能性が高い。台湾の再統一を説得しようとしても、このような「二制度」ではますます遠のくだろう。
だが、習近平主席は、対米関係に損害を与えたことについて報いを受けることはないかもしれない。香港の民主的自由を守ることは、米国外交が長らく当然視してきたことだが、中国政府はトランプ政権ならば民主主義者への攻撃も見過ごすと計算しているように見受けられる。米国務省は、活動家逮捕の一件につき、報道を「承知している」と述べただけで批判をせず、米国の香港総領事は林鄭氏の勝利に祝意を表している。
出 典:Washington Post ‘China betrays the promise of democracy in Hong Kong’ (March 29, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/china-betrays-the-promise-of-democracy-in-hong-kong/2017/03/29/5a2e8098-13e9-11e7-ada0-1489b735b3a3_story.html?utm_term=.7b9ff1ad2836