従業員意識調査を受ける際の注意点
1. 調査後、犯人探しをしない
調査結果で、会社に批判的なコメントやデータが出たとしても、個人を探り当て、注意するようなことはしないことが重要です。調査結果が悪かったら犯人探しが始まるということが従業員に伝わってしまうと、以後の調査で正直な意見が聞けなくなり、組織に関する課題はもちろん、新しい商品やサービスについての建設的な意見も聞けなくなってしまいます。また従業員と経営層の間の信頼関係を著しく失うことになります。
2. 調査をやったら終わりだと思わない
調査したことで満足するのではなく、調査後、どう動くかが大切です。調査後の会社としての施策を従業員に見せていくことで「調査後、会社が変わろうとしている」「みんなで会社を良くしていってもいいんだ」と、組織としての一体感や、経営層への信頼を得ていくことができます。そして調査を実施した本来の目的である業務改善や、組織風土の向上につながっていきます。
3. 具体的施策のヒアリングをする
調査後の施策や展開が従業員に見えていない状態は、従業員のやる気を低下させることになります。調査後、従業員に対して、グループもしくは個別で、今後の具体的な改善案についてのヒアリングをし、施策内容とスケジュールを決めていき、適切な場所やタイミングに発表して全社認識の上でプロジェクトを進めていくことが大切です。
4. 調査前からチームを立ち上げる
調査前から「調査をなぜ受けるのか」「調査後、施策を検討したいこと」「プロジェクト化して進めたいこと」「こんなゴールを目指していること」などを共有した、チームを立ち上げておきます。調査自体もそのチームに進めていただくのも良いでしょう。調査前からチームが動くことで、調査後の改善施策についてもスピーディーに進んでいきます。
5. ネガティブ意見に引っ張られない
自由記入欄が存在する調査の場合、会社に対する不平不満を書かれることがありますが、それはそれで一つの意見として受け取り、本来の目的である、施策の明確化と優先順位の決定と、施策を具体的に進めていくことに集中します。ネガティブに引っ張られるのではなく、改善施策を進めることで組織全体をポジティブに引っ張っていくことで、結果、全体的に良くなっていきます。
以上が経営層や総務部、人事部などの方に知っておいていただきたい項目となります。調査は、会社や組織に対しての不満分子を探し出すものではなく、従業員の方の意見やアイデア、要望を適切な形で経営に取り入れ、経営層も嬉しく、従業員の方も楽しい、組織風土や職場環境を作り上げていくための指標として活用したいです。
まとめ
従業員意識調査を有効に活用することで、様々なメリットを得ることが可能です。一部ご紹介します。
情報通信業:評価・勤怠の課題が「見える化」された。その結果、透明かつ公正な人事評価制度を制定し、人事評価に対する不満が解消された。
金融・保険業:コミュニケーションの課題が「見える化」された。その結果、コミュニケーションツールを導入し、コミュニケーションが円滑にできるようになり、セクショナリズムが解消された。
美容業:教育・研修の課題が「見える化」された。その結果、教育・研修カリキュラムを再構築するといった施策を行い、上下間の意思伝達をスムーズにし、ジェネレーションギャップが緩和された。
卸売・小売業:企業理念の課題が「見える化」された。その結果、クレドを導入し、組織文化、価値観の共有などを行い、明るく楽しい職場になった。
上記のように、見えなかった「組織の意識」を「見える化」することで、全社的に改善プロセスを進めることが可能になり、様々な課題解決につながっていきます。
組織のことをよく把握しているつもりでも、調査をすると「思っていた結果と違った」というケースが非常に多いです。自分の体のことはよく把握しているつもりでも、健康診断の結果を見てみないと実際のところは分からない。ということと似ています。これまで調査を受けたことがある方も、今後調査を受ける方にも、この記事(組織の健康診断が会社を強くする)が今後の組織経営の参考になり、さらなる成長に役立ちましたら幸いです。
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