2024年11月22日(金)

AIはシンギュラリティの夢を見るか?

2017年6月13日

スマートスピーカーの現状

 コムスコアの調査資料に、実際にスマートスピーカーがどのように使われているかを示す最新の数字がありますが、「まあ、そんなもんかな」という感じがします。スマートスピーカーでEコマースを利用している人の割合は11%で13位、食べ物やサービスの注文をする人は8%で14位となっています。

 1. 一般的な質問 60%
 2. 天気予報 57%
 3. 音楽ストリーミング 54%
 4. タイマーやアラーム 41%
 5. ToDoとリマインダー 39%
 6. カレンダー 27%
 7. ホームオートメーション 27%

 7位のホームオートメーションは、音声アシスタントに対応した照明や室温調整のサーモスタットなどの操作です。スェーデンのイケア(IKEA)は、スマート照明のラインナップを、AlexaとGoogle Assistantに対応したと発表しています。これは「図・音声アシスタント」の「モノ」にあたるものです。アップルのホームオートメーションの仕様(HomeKit)にも対応しているので、おそらくHomePodからもコントロールできるでしょう。

 米国における現在の普及率8%は、まだスマートスピーカーがアーリーアダプターのものであることを示しています。それが、15%から20%の間にあるキャズムと呼ばれる大きな溝を超えて一般に普及するためには、ユーザーの音声による命令や質問を理解する、音声認識と自然言語処理の能力を向上させること、そして、例えばスマートフォンの活用を促進したソーシャルネットワークサービスのような、そのプラットフォームならではの新しい魅力的なサービスが提供されることが必要でしょう。

 スマートスピーカーの米国での販売価格は、アマゾンのEchoが179.99ドル、その廉価版のEcho Dotは49.99ドル、グーグルのHomeは129ドルとなっていますが、アマゾンが英国でEchoを値下げするなど、グーグルに対抗する動きを見せています。しかし、アップルのHomePodは349ドルと高価格です。

本命はパーソナル・アシスタント

 音声アシスタントは、スマートスピーカーからだけでなく、スマートフォンからも利用されます。また、アマゾンとグーグルは、他社がマイクとスピーカーのついた製品を、音声アシスタントに接続するための仕様を公開しています。彼らはスマートスピーカーの販売で利益を上げようとは考えていないでしょう。すでにフォードとフォルクスワーゲンが、ユーザーが運転中にアマゾンのAlexaと会話できるようにすることを計画しています。しかし、アップルはそのような仕様を公開しないのではないかと思います。良くも悪くもクローズドに管理された「アップルの体験」を守るため、そしてアップルがデザインしたプレミアムなハードウェアの販売で利益を得るために。

 スマートスピーカーでは音声だけの会話になりますが、スマートフォンを使っているときには、ユーザーはキーボードを使ってテキストで命令や質問をしたい場合もあるでしょうし、応答は画像で表示された方がわかりやすいかもしれません。自動車を運転しているときには、ナビゲーション用の地図上に情報を表示する以外は、基本的に音声での応答にすべきです。アマゾンはディスプレイのついたスマートスピーカー(Echo Show)を発表しましたが、スマートスピーカーと連携するテレビの画面などに応答の画像を表示することなども考えられます。サービスの提供者は、状況に応じた応答を用意する必要があります。

 ポスト・スマホの新しいプラットフォームは、パーソナルアシスタントと呼ぶべきものになるのではないでしょうか。それは、個々のユーザーを認識して理解し、複数のデバイスに跨った会話を記憶し、その文脈に沿った臨機応変なアシストをするものです。

写真を拡大 パーソナルアシスタント

 出かける前にスマートスピーカーで目的地までの所要時間を調べたら、自動車に乗ったときに、そのルートがすぐにカーナビに反映されて欲しいですし、帰宅途中でスマートフォンで調べた映画を、リビングでスマートスピーカーに「さっきの映画をテレビで見せて」と指示できれば快適でしょう。


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