勝者は誰か?
スマートスピーカーで先行するアマゾンのAlexaに対応した、Skill(スキル)と呼ばれるサービスの数が、6月には1万2000を超えました。しかし、スマートフォンでもサービス(アプリ)はiOSとAndoridの両方に対応したように、それらもすぐに他のプラットフォームにも対応するでしょう。
複数のデバイスに跨って良質な経験を提供できるかという点で、アマゾンの弱みはスマートフォンのプラットフォーム(OS)を持っていないことです。
もちろん、アプリとしてiPhoneやAndroidスマートフォンでAlexaを利用することはできますが、やはりGoogle Assistant(Android)やSiri(iOS)のようにOSに組み込まれているものに使い勝手が劣ります。例えば、Google AssistantはiPhoneのアプリとしても提供されましたが、他のアプリをコントロールできない、スリープ状態からホームボタンの長押しで起動できないなどのSiriとの機能差があります。
グーグルの強みは、何と言っても検索サービスで溜め込んだ知識ベースでしょう。 「一般的な質問」に対しては、自前の知識ベースから答えを探すか、インターネット上のサービスを引用して、例えば「ウィキペディアによると...」というように答えることになりますが、ストーン・テンプルのテストでのGoogle Assistantの正解率の高さ(90.6%)は、ナレッジグラフなどの自前の知識ベースの充実によるものでしょう。グーグルのナレッジグラフとは、入力されたキーワードが何を意味するかを把握して、700億以上のコトとそれらの関係性を含む、構造化されたデータベースから検索結果を表示する仕組みです。
68.1%の質問を理解して答えることができたということも、グーグルの機械学習による音声認識と自然言語処理の技術が一歩先んじていることをうかがわせます。Google Assistantはすでに日本語にも対応しており、Homeは今年中に日本でも発売される予定です。
アップルは何よりも、まずSiriの音声認識と自然言語処理の能力を向上させる必要があるでしょう。スマートスピーカーについては、スピーカーとして高音質で高機能なだけで、発表時の「我々はホームミュージックを再発明する」というティム・クックCEOの言葉も陳腐に聞こえました。アマゾンとグーグルが新しいプラットフォームを構築するチャレンジをしているのに対して、アップルはiPhoneの次の収益となるハードウェアを模索しているようです。
ポスト・スマホのプラットフォーマーの争いは、今のところグーグルが優位に立っているように見えます。しかし、プラットフォームが変わるタイミングは、まったく新しいサービスを考える大きなチャンスでもあります。スマートフォン時代のFacebookやInstagramやLINEのような、新しいプラットフォーム上で人々を虜にするサービスを提供する新たな勝者が生まれるかもしれません。
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