知っていたトランプ
カタールを取り巻く状況に新たな事実も分かってきた。トランプ大統領は9日、サウジなどによるカタール断交について、事前に相談を受けて知っていたとし、米国の了承の下で事態が動いたことを明らかにした。
カタールは米国に、過激派組織「イスラム国」(IS)に対する空爆作戦の拠点であるアルウデイド空軍基地を提供しており、軍事的には極めて重要な役割を演じている。しかし、トランプ氏はこうしたカタールの特別の地位にもかかわらず、サウジなどの支持に回ったことになる。
トランプ大統領は先月のサウジ訪問の際、サルマン国王との個人的な関係を強化しており、国王自身からカタールの「イスラム過激派支援」について相当吹き込まれ、その時点からサウジがカタールとの関係断絶に踏み切ることも知っていたと見るのが合理的だ。
トランプ氏は断交直後からサウジ支持をツイートしたが、9日も「カタールが国家の上層レベルで過激派へ資金を提供してきた」と批判。断交は必要な措置であり、カタールがテロへの支援を止めて責任ある国家に復帰するよう要求した。
しかしこのトランプ大統領の強硬発言はティラーソン国務長官が反カタール陣営にカタールとの対話を呼び掛け、カタールに対する“封鎖”を解除するよう要求したわずか1時間後に行われた。このため、米政府内部が混乱しているのではないかとの憶測を呼んだ。
これについてホワイトハウスの高官は「大統領はテロの抑止に、国務長官は外交に重点をおいて発言しただけ」で、政策は一貫していると弁護した。一部には「グッドコップ(国務長官)、バッドコップ(大統領)の役割を演じている」(米紙)との見方もある。
しかし、ティラーソン国務長官とマティス国防長官は8日、異例なことに朝食を共にし、その後、一緒に大統領に会いにホワイトハウスに向かっており、政権の良識派が制御不能な“トランプ対策”を錬ったのではないかとも見られている。
いずれにしても今回の事態は、サイバー・テロがロシアや北朝鮮のようなサイバー国家の独占ではなく、フリーランスのハッカーに報酬を払って仕掛けることができる可能性を浮き彫りにしたといえる。カタールをめぐるペルシャ湾岸の対立は米国ばかりか、地域大国であるイラン、トルコ、イスラエルをも巻き込もうとしており、その展開から目が離せない。
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