2024年11月21日(木)

この熱き人々

2017年7月20日

 「初めて仕立て上がりの白い屏風を見た時、立体性を表現するのにいい媒体かもしれないとひらめきました。あ、これだ! って感じたんです」

 平面で立体性を表現する。自在に曲がってしっかり立つ白い屏風を得て広がるアランの目指す世界は、どんなものなのだろうか。

 

 「僕の描く森の世界は、中に入っていけるような錯覚が生まれたらいいなと思っていました。僕自身も絵の中に入りたいし、見ている人も絵の中に入っていけるようなね。山道を歩いていると奥にあった木が次々見えてくるような。立体的な作品を作るのに仕掛けが目立ってしまうフラストレーションを、白い屏風が解消してくれると思えたんです」

 さらに、高校生の頃から求めていた光によって表現するという方法を、台紙の上に金箔、銀箔を押して、その上に岩絵の具で描くという日本画の技法の中に見出したこと。岩絵の具は粒子の細かさで表面の乱反射が変わって明るくも暗くもなるが、そこに台紙の金箔、銀箔がより複雑な光の表現を可能にする。

 「絵の具で絵を描いても、見る人は作品から反射される光を見ている。だから光をもって表現しなければと、以前からいろいろ工夫していたんです。アルミの粉末を混ぜたりね。金属の箔を使うという発想は全くなかった。だから箔を押す技術をがんばって身に付けました。光の微妙な変化で一日の中でも絵が表情を変えると、生活空間でともに長い間楽しめるでしょ」

 生活空間。アランの作品は美術館に置かれることを想定しているのではなく、生活の中で人とともに生きていくことを求めている。もちろん展覧会なども開かれるが、基本は注文制作だと言い切る。

 「注文してくれた人の希望を聞くことはとても大事です。何を求めているのか、どこに飾るのか、どんなことで安らぎを感じるのか。服の色、ちょっとした立ち居振る舞いとか、大きなヒントになります」


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