急性中耳炎の主な症状としては、耳の痛みや耳垂れ、機嫌が悪くなるなどですが、反復性中耳炎になると、難聴などの症状を呈します。
中耳炎に関しては、耳鼻科医と小児科医では治療に対する考え方が異なることがあります。
一般的に小児科医は「小児急性中耳炎診療ガイドライン」に従い治療をします。このガイドラインに従って抗生物質を処方すれば数週間で急性中耳炎は治癒することがほとんどです。ただ、問題なのは、中耳炎を繰り返すことで、抗生物質の反復使用になってしまう点です。確かに、中耳炎が治っている期間が長ければ、その都度、抗生物質を服用する治療でも良いと思います。
ただし、保育園に通う子どもは、その都度は治癒しますが、保育園などの環境で再び長時間過ごすことで、鼻症状が改善しないために、中耳炎を反復するお子さんが多いのです。保育園に通っていると1日3回抗生物質を服用するのが難しいことも関係があるのかもしれません。特に6カ月に3回、12カ月に4回以上、急性中耳炎に罹患した状態を反復性中耳炎と言います。
急性中耳炎が完治せずに反復性中耳炎になったり、炎症が改善せず中耳腔に液体が貯まる滲出性中耳炎になることも多いです。
耳鼻科の中でも、私は特に感染症が専門なので、中耳炎を繰り返す子どもには、鼓膜を小さく切開し、短期留置型の鼓膜用の換気チューブを留置します。このチューブは、3~4カ月で自然に脱落し、傷跡も残りません。このチューブが入っている期間は、多少鼻の調子が悪くても、中耳炎を発症することはまれです。
ただ、耳鼻科医の中には、切開をしたがらず、換気チューブを挿入しない医師もいます。適切な治療を施さないと、鼓膜の一部が陥凹して中耳腔の粘膜と癒着してしまう癒着性中耳炎や中耳のまわりの骨が壊れていく真珠腫になってしまうこともあります。
保護者の方が、お子さんの鼻水の色が現在はどうなっているのか、また中耳炎になっているかどうかはわかりにくいものですし、子どもは症状を言葉で訴えることができません。お子さんの鼻の調子が悪い場合、保護者は、お子さんが普段より頻繁に耳を触る、耳を触りながら泣く、夜泣きが多い、また家に誰かが帰って来た時に、普段ならばすぐに駆け寄っていくのに行かない、人の話を聞くと時に目をキョロキョロさせているなど変わった様子がないか注意深く見てあげてください。こうした行動で、子どもは耳の調子が悪いことを訴えています。
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