種明かしをすると、このマントは再帰性反射材という特殊な素材でできている。開発したのは慶応義塾大学の舘暲〔たち・すすむ〕教授。
透明マントを着た人に、プロジェクターを使って背景とまったく同じ映像を重ね映す。この再帰性反射材は一般的な布のようにゆがむことがなく、平坦に映像を映すことができるので、マントにつつまれた部分の背後が透けているように見える。会場では、このマントを着て、記念撮影することもできる。
舘教授は、バーチャルリアリティの研究者。他にも、会場内で紹介されている「テレイグジスタンス」の研究も手がけている。テレイグジスタンスとは、実際にはない遠隔地の物や人を、まるで存在するかのように感じながら、操作する技術のこと。
たとえば、自分が行けない遠くの場所に、身代わりのロボットを送り込めば、あたかも自分の体験のように感じることができる。この研究がすすめば、「どこでもドア」と同じようなことが、ある程度は可能になるかもしれない。
ほかにもタケコプターのようにひとりで簡単に空を飛べる1人乗りヘリコプターのシートに座ることができたり、「ほんやくコンニャク」のように言語研究の成果を生かした展示があったり、誰もが知っているひみつ道具が続く。人気のある展示品には行列ができるほど。人気はやっぱり「透明マント」、「タケコプター」だ。
親子で楽しむポイントは?
本展は、ドラえもんのひみつ道具を具現化するような科学研究を日本国中探しまわり、3年越しで実現した企画だそうだ。
今回の「ドラえもんの科学みらい展」で、ひみつ道具の世界と重ね合わせて研究成果を発表することになった研究者たちは、多くが30代、40代。小さなころにドラえもんを見て、「いつかあんなものを作れたらいいな」と思っていたそうだ。
日本科学未来館の冨田知宏さんに、展覧会の見どころを聞いてみた。
「『ドラえもん』は発表以来多くの人に愛されてきたキャラクターですから、いまの親御さん世代も知っているし、そのお子さん世代も知っている。だから、親子で共通の話をしながら、展示を見られるんです。
展示内容は、小学4年生が理解できるレベルに設定しました。お子さんには若干難しい内容も、親御さんの説明で補ってもらい、科学のおもしろさをともに知っていただきたい。とにかく、親子で科学についての会話を楽しんでいただければ」