お父さんを引っ張り出す
「ものづくり」活動
一般的に、「地域のボランティア」というと、やはり高齢の方が中心となるイメージがあるが、そんな中に30、40代の若い人たちが入っていくことで問題は起きないのか。秋津では長く「長」の座に居続ける人が出ないように、そしてなるべく学校に子どもがいる現役世代のお父さんを中心としたな組織作りを心がけていたので、特に大きな問題は起きなかったそうだが、「一般的には若い世代のやり方と、年長者の昔からのやり方が衝突する場合は多々ある」(前出の佐藤氏)といった具合だ。また、学校の授業に地域の人が入ることで、「お父さん・お母さんの力を借りないと授業ができないの?」という心無い言葉を同僚から言われた先生もいたと聞く。それでも、子どもたちがそれを必要としてくれるし、何より「自分たちがやりたいからやる」という姿勢で楽しみながらやることによって、今でも活動が継続しているのではないだろうか。
「ボランティア」という言い方を何回かしてしまったが、そんな敷居の高いものではなく、とにかく「自分の好きなことをする」「子どもと楽しむ」という意識で始めてみるのが良いだろう。秋津小学校でもよくあるのだが、特に若い世代の男性におすすめなのは「ものづくり」のイベントだ。秋津では今まで、お父さんを中心に「飼育小屋」、「ごろごろとしょしつ」、しまいには「井戸」まで掘って作ってしまった。他にも、先述のキャンプではテント張りなどの力仕事で大活躍だし、スポーツやパソコンクラブでも、お父さんたちを中心に子どもたちと楽しく触れ合っている。
大人との触れあいで
子どもたちの意識も変わる
さらに、誤解を恐れずに言えば、大人が子どもと関わることで、大人にはたくさんのメリットがある。例えば「納税意識」。子どもたちに「このおじいさんになら自分の税金を使ってもらっても良い」と思ってもらえることは、冗談ではなく非常に大切だ。他にも、Iターン・Uターン現象を起こさせることも重要であろう。小学校の頃から地域の大人たちと色々なイベントを通じて触れ合った子どもたちは、卒業後も自然と小学校へ足を運び、地域のイベントに参加し、そして進学や就職で秋津を離れても、いつかまた戻ってくる。ちなみに秋津小学校の今のPTA会長は小学校の第1期生とのこと。こうやっていつかは若者が戻ってくることで町も元気をなくさず、高齢者も安心して暮らすことができる。
ちなみに秋津小学校では、「世代間交流」として2年生が飼い育てた鈴虫を地域に住むお年寄りに届けるという取り組みを行っている。渡すだけでなく、一定期間後にまた戻してもらいに行くことで、「お年寄りの元気確認」ができるのだ。また、「サロンあきつ」というお年寄りの集会への参加者が減ってきてしまったので、その対策として小学校のコミュニティルームに場所を移したところ、お年寄りの参加人数が65人から多い年は約1600人にまで増えたという。さらに、授業の中でお年寄りと子どもたちが触れ合うという取り組みにも発展した。「お年よりは子どもたちの笑顔から元気をもらい、『自分たちも何かしてあげたい』とお汁粉パーティーを催したんです」と岸氏。もちろん町の高齢化が進むことは止められないが、自分たちが高齢になっても住みやすい町づくりがいかに重要かよくわかる。