米国のシェールガス売り込み策
6月29日、トランプ大統領はエネルギー省で石油、石炭会社幹部などを前に、「米国のエネルギー政策は新たな時代を迎え、米国はエネルギーを世界中に輸出する。米国の黄金時代の到来だ」と述べた。東部の産炭地区を親ロ派に占領されているウクライナに石炭を輸出するとも述べたが、大型の外航船を受け入れる石炭の荷揚げ設備がない同地域向けの輸出の実現は難しそうだ。実現可能なのはLNG輸出だ。
金融・世界経済に関する首脳会議(G20)の前7月6日にトランプ大統領はポーランド・ワルシャワを訪問。バルト3カ国、東欧諸国などの首脳と面談し、LNGの輸出を売り込んだと報道されている。米・国家経済会議のコーン委員長は「天然ガス供給を政治的な武器として使い厳冬期に供給を遮断すると脅す人たちがいるが、私たちは必要とする人すべてにガスを利用可能にする」と述べ、暗にロシアを非難している。
6月14日、米国上院ではロシアが大統領選に介入したとの疑惑を受け、ロシアに対する制裁強化法案が98対2という圧倒的多数で可決された。本制裁が実行されれば、ガスプロムがドイツ、オーストリアの企業と共同で進めている新パイプラインプロジェクト、ノード・ストリーム2の進捗に影響が出ると予想されていることから、ロシアのみならずドイツ、オーストリアの閣僚からも、「米国の狙いはロシアに制裁を与え、自国のLNG輸出を促進し雇用を確保することだ」との批判も出ている。
トランプに助けを求めるプーチン
7月7日にトランプ大統領はプーチン大統領と初めて会談した。会談前、欧州のメディアは、プーチン大統領が「上院で可決された対ロシア制裁強化策を認めないよう」にトランプ大統領に働きかけると報道していた。会談後、トランプ大統領は対ロ制裁に関する話題は出なかったとツイートしたが、10日にホワイトハウスのサンダース副報道官が、ロシアの大統領選介入疑惑に関する制裁強化が話題としてあがったと認めた。
トランプ大統領が、当面対ロ制裁を緩和することはないと見られている。一方、オバマ前大統領が決定した対イランの経済制裁解除に関しては、トランプ大統領は基本的に反対の立場であり、いま90日かけて方針を検討中だが、強かな欧州企業はトランプ大統領の気持ちを逆なでするかのように、イランでの天然ガス開発を進めようとしている。