世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月1日

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 この論説は、ISがいなくなった後、シリアとイラクはどうなるかを論じたものです。しかしながら、イラクとシリアでは状況が異なり、同じようには論じられないのではないかと思われます。

 モスルの解放は、イラク軍が米国と協力して行ったものであり、ISなきモスルは、真空状態になるのではなく、イラクに併合されることになります。

 ラッカについては、解放の主導権が米軍支援のYPGと反政府軍になるのか、あるいはアサドの軍になるのかによって、状況は全く違ってくることになります。これをめぐっては、米国、トルコ、イラン、ロシアが複雑に絡み合う新たな紛争になる可能性があります。

 イラクにおいても、シリアにおいても、クルド問題が重要と言うのはその通りですが、ISの滅亡によってその問題が出てきたというわけではありません。

 イラクのクルド問題については、9月の国民投票の問題が大きい要素です。連邦主義が維持されるか否かが最大の問題で、イラク北部が「クルディスタン」として分離独立することになると、地域には激震が走ることになるでしょう。

 シリアのクルドの問題は、トルコがどういう対応をするかが大きな問題です。もしトルコがRojavaに対する軍事行動を起こすようなことがあれば、トルコと米国との関係など、諸方面に大きな影響を与える結果となるでしょう。

 この論説は、IS後のシリア、イラクのあり方という重要な問題を取り上げてはいるのですが、論点の整理がうまくなされていないように感じられます。ただ、シリアが分権化された国になることが見込まれるということと、分権の主体間の協力関係が重要という指摘には賛成できます。

  
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