2024年11月25日(月)

WEDGE REPORT

2017年8月4日

ビッグデータでプロモーションを効率化

 同社の強みは、何と言ってもアプリから得たビッグデータの大きさだ。中国にはさまざまな旅行関連アプリがあるが、その中でも最大の訪日旅行客のビッグデータを持っている。ユーザーをジャンル分けしたうえで行動分析も行い、データをマーケティングやプロモーションに使える形に加工してもいる。プロモーションを実施した際にユーザーがどういうリアクションをとったか分析し、プロモーションの効果を「見える化」することもできる。

 「一般に、日本の中国人インバウンド向けのプロモーションは、数百万円かけないとできないとされています。ウェイボーで1回投稿するだけで、代理店に20万円取られたりする。我が社は日本に特化したメディアを運営しており、なおかついろんなメディアとつながっているので、よりお金をかけずに効果が出せます」

 日本でインバウンド向けプロモーションを手掛ける広告代理店などに比べ、半分あるいは3分の1程度の費用で、アプリに加えてWeChat、ウェイボー、有名な情報サイトなどを活用した複合的なプロモーションができるという。

 「コストパフォーマンスの高さと、ワンストップでさまざまなプロモーションができるのが、選ばれる理由です」

 フェイスブックやツイッター、ユーチューブなど、世界共通のツールが使えず、独自のネット社会を作り上げている中国は、多くの海外企業にとって独自の対策を取る必要がある難しい市場といえる。中国独自のSNSにしても、「90後」と呼ばれる1990年代生まれはQQを使い、それ以外の世代はWeChatを使うといった具合に、単純には全世代を攻めきれないややこしさもある。

 「台湾や香港でプロモーションがうまくいっても、中国は攻めきれないと悩んでいる会社は多い。中国向けのプロモーションで一番頼りになるメディアになることを目指しています」

 プロモーション支援や広告掲載などで提携している日本企業は、飲食店や電気店など40社ほどで、今後増える見込みだ。爆買いの終了と体験型観光へのシフトが進む中、FITを対象にしたSNSなどを活用したデジタルマーケティングの重要性が指摘されている。こうした流れの中で、同社の役割は一層拡大するに違いない。今は中国人向けの運用をしているが、将来的には繁体字にも対応し、台湾のユーザーも取り込みたいという。

 同社は今のところ、旅行をメインにメディア事業を展開している。今後、中国で日本についての総合的な情報プラットフォームを築けるよう、コンテンツを拡充していくつもりだ。

 「中国には、日本に興味を持つ人が少なくとも3億人くらいいる。日本にはサブカルチャーや茶道、『整理術』など多くの魅力ある素材がある。これを動画にしたり、音声にしたり、記事にしたりして、見てもらうプラットフォームをつくりたい。日本のことが好きで、日本を理解している我々だからこそ、できると思っています」

 劉社長は、日中を跨ぐ一大コンテンツメディアの形成を誓っている。

  
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