ポスト習近平の有力候補の1人だった重慶市トップの孫政才氏が失脚した。孫氏は53歳と若く、胡錦濤前国家主席の流れをくむ共青団のホープだった。7月末から8月初めにかけて、長老らも参加して十九大(第19回党大会)前の意見交換を行う北戴河会議を目前にした大物の「落馬」は何を意味するのか。
7月15日、新華社通信が孫氏を市党委員会書記に再任しないと報道した。翌16日には香港メディアが重大な規律違反の疑いで共産党中央規律検査委員会の調査を受けていると報道。そして24日、新華社通信が党中央が重大な規律違反の疑いで調査を行うと決定したと報じた。
孫氏は中国共産党政治局で最年少の委員だった。同じく最年少のもう1人は、ポスト習近平の最有力候補ともいうべき共青団の胡春華氏(広東省党委書記)だ。この2人はともに十九大での政治局常務委入りが有力視されていた。
薄熙来事件の事後処理が不徹底だったか
孫氏は農業部を経て、吉林省委書記となり、12年の十八大で政治局委員となった。特に温家宝前首相との結びつきが強いことで知られ、これまでとんとん拍子で出世してきたといえる。重慶では、12年に失脚した薄熙来氏のいわば事後処理に当たってきた。同じ共青団の胡氏に比べ、任地の悪さもあって成果が上げられていなかった部分はある。ところで、今回、調査対象とされた原因はいったい何なのか。
まず指摘されているのは、重慶での薄熙来事件の事後処理が不徹底だったとされていることだ。今年2月には、党中央から派遣される巡視組にかなりの批判を加えられ、その様子が2月13日、人民日報の運営する人民網で報じられている。
「党のリーダーが弱く、責任感が弱く、習近平総書記の重要講話の精神を学び通すのにはギャップがあり、……『薄(熙来)、王(立軍)』思想の残した害毒を除去できておらず、……巡視組は一部リーダー、幹部の問題の手掛かりをつかみ、すでに規定に従って、中央規律委員会、中央組織部などの関係部門に処理するよう伝えた」という具合に、散々な批判のされようだった。
その後、「『薄、王』思想の残した害毒を一掃する」という言葉は、孫氏自身も繰り返し使ってきたことが地元紙の重慶日報で報じられている。後任に抜擢されたばかりの陳敏爾氏は、ことさらこの言葉を強調しており、失脚の主因かどうかは別として、事後処理のまずさが政敵を利したことは間違いない。