2024年4月20日(土)

中東を読み解く

2017年8月28日

同盟国パキスタンを非難

 しかし、アフガンの紛争はアフガンだけでは解決できない。特に近隣諸国の協力は不可欠だが、逆に紛争を助長し、裏で過激派を支援している国もある。トランプ氏が新戦略の発表の際、パキスタンを「混乱と暴力、恐怖の温床」とかつてないほど強く非難したのはそのためだ。

 核保有国パキスタンは自国の過激派パキスタン・タリバンを厳しく弾圧しているものの、アフガンのタリバンについては設立当初から密かに支援を続けてきた。表ではテロを非難しながら、裏では情報機関ISIがタリバンや、最凶のハッカニ・グループに聖域を与えてきたのは公然とした秘密だ。特にパキスタンの西部クエッタにはタリバンの事実上の本部があるほどだ。

 パキスタンのこの二重政策はアフガンに敵対政権を作らせないためであり、カシミール紛争などを抱える宿敵のインドに対するカードとするためだ。米国は冷戦時代、ソ連軍のアフガン侵攻と戦うイスラム戦士を援助するルートとしてパキスタンを使い、その見返りに軍事援助を拡大した。

 だが、米国がパキスタン・アボタバードに潜伏していたアルカイダの指導者オサマ・ビンラディンを越境暗殺して以来、関係がギクシャクし、米国は過激派支援をやめなければ、援助を削減するとパキスタンに圧力を掛けてきた。トランプ氏は今回、パキスタンが最も嫌う「インドとの連携強化」をあえて発表に盛り込んだのはさらに圧力を加えるためだ。

 ただし、パキスタンはトランプ氏の発言を「米国の失敗をパキスタンに転化するもの」と反発しており、結果としてロシアや中国との関係強化に追い込む恐れもある。実際、中国のパキスタン援助は増加しており、2017年の対パキスタン投資はすでに620億ドルにも上っている。


新着記事

»もっと見る