スペイン・バルセロナの人気観光地で17日起きた車暴走テロは外国人観光客ら14人が死亡、約120人が負傷するという惨事となった。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。ISの「”疑似機国家”崩壊は時間の問題」だが、世界がテロの脅威から永遠に抜け出すことはできないという「IS以後」を暗示する事件となった。
同時多発テロを計画か
凶行は夏のほてりが残る繁華街で起こった。夕闇が迫る午後5時半過ぎ、バルセロナの人気観光地にはバケーションを楽しむ多くの観光客らが散策していた。バルセロナを州都とするカタルーニャ自治州にちなんだカタルーニャ広場から南方の海岸に向かうランブラス通り。有名な世界遺産、サグラダ・ファミリアから2キロの地点だ。ここに白いワゴン車がジグザグに突っ込み、600メートル暴走。子供も容赦なく引き倒した。
ワゴン車を運転していた実行犯は犯行後に車を乗り捨てて逃走した。事件の関連でモロッコ人とアラブ系スペイン人の4人が拘束された。治安当局によると、モロッコ人の1人はドリス・ウカビルという男で、テロに使われたワゴン車も含めレンタカー3台を借りていた。このため、他の2台が別のテロに使われる懸念がある、という。
この事件から一夜明けた18日早朝、今度はバルセロナから約120キロ南西の保養地カンブリスで、乗用車のアウディが歩道に突っ込んで通行人をはね、7人が負傷。警察がアウディを追跡し、乗っていた5人を銃撃戦の末に射殺した。射殺された容疑者は偽の自爆ベルトを装着していたという。
地元のメディアなどによると、16日には、バルセロナ南西150キロのアルカナーの住宅街で2回の爆発があり、1人が死亡した。当初、この爆発はガス爆発事故とされていたが、警察は現在「爆弾を製造していて誤爆した」事件との見方を強めている。
治安当局はこの3つの事件が十数人に上る同じ過激グループによる犯行と見ており、同時多発テロを計画していたことが濃厚となった。グループの中核はモロッコ系で、背後に“モロッコ・コネクション”の存在が浮上している。
車はもはや通常手段
バルセロナ・テロの後、IS系のアマク通信が犯行声明を発表。「IS戦士が実行した作戦であり、(米主導の)有志連合を標的にせよ、というISの呼び掛けに応じたもの」と報復テロであることを強調した。スペインも有志連合の一員だ。
今回のテロが、ISが直接計画した組織型テロなのか、またISの指令によるテロなのか、はたまた過激化した地元のイスラム教徒がISの呼び掛けに呼応したテロだったのか、なお不明だ。しかしウカビル容疑者は2年前、「自分が王なら、不信心者すべてを殺す」とネットに投稿しており、彼らがISの影響を受けていたのは間違いない。
スペインでは2004年にマドリードで、191人が死亡し、1800人以上が負傷する通勤列車爆破テロが発生したが、それ以降はフランスや英国など欧州各地でテロが続発していたのに比べ、治安は安定してきた。だが、スペインは中東からのイスラム過激派の移動の中継地になっていることから、いつか大きなテロが起きる、という懸念が出ていた。
今回のテロの特徴はその手段に車を使った点だ。昨年7月にフランスの保養地ニースで起きた86人死亡の冷凍車暴走テロ以来、ドイツ、フランス、英国、スウェーデンなどで車を使用したテロが相次いでいる。ISは車など日常的に簡単に手に入る手段でテロを起こすよう呼び掛けており、「車はもはやテロの常套手段」(アナリスト)になった。