2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2017年9月15日

メルケルと火花

 エルドアン氏のこうしたロシア寄りの姿勢や反体制派への人権弾圧を公然と批判しているのがEUをけん引するドイツのメルケル首相だ。9月24日に総選挙を控える首相は最近のテレビ討論の中で、「トルコが急速に民主主義から遠ざかっている」として、トルコのEU加盟交渉の打ち切りもあり得る、との考えを明らかにした。

 これに対して、エルドアン氏は強く反発。「トルコのEU加盟交渉を続けたいのか、終わらせたいのか、決断するよう」逆にEU側に要求した。同氏はさらに、ドイツの選挙では、“トルコの敵”に投票しないよう、ドイツのトルコ系市民に呼び掛けた。敵とは、名指しはしなかったものの、メルケル首相のことであるのは明白だ。

 メルケル首相は10月19日からのEU首脳会議で、トルコのEU加盟交渉について論議する考えを明らかにしており、この会議後に交渉の打ち切りが発表される可能性もある。

 しかし、仮に交渉の打ち切りや、中断が決定されれば、エルドアン氏が猛反発し、ロシアにより接近させてしまう恐れも強い。ロシアは9月14日から、対NATO戦を想定して、ベラルーシとの合同軍事演習を開始した。冷戦終結以来、最大規模の演習になることが予想されている。NATOの軍事同盟にロシアの楔が打ち込まれたことは米欧にとって想定を超える深刻な事態なのかもしれない。

  
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