今秋5年ぶりに開かれる中国共産党大会の問題点を整理し、なかでも習近平体制が如何なる方向に進むかについて論評した記事です。特段の新味が含まれているわけではありませんが、全体としてバランスのとれた内容になっています。このうち、特に、人事をめぐる党内闘争についてコメントすれば次のとおりです。
まず、習近平の権力掌握度については、まず、「反腐敗運動」をどう見るかです。「腐敗撲滅」の名のもとに、これまで数年間にわたり行われてきた内容を見ると、基本的に権力闘争の側面が強い、と見るのが常識的でしょう。これは、文化大革命の初期の頃に、政敵を打倒するために紅衛兵運動などを利用して、イデオロギーの純化、青年の教育を目指すなどのスローガンが使われたことを想起させます。今日、腐敗・汚職と無縁な党幹部はほとんどいないと言われ、「反腐敗運動」の対象になった者たちは、政治的に打倒されるべき党幹部たちばかりだったということでしょう。習近平体制下で、これからも「反腐敗運動」は続けられるものと思われます。
習近平自身、指導者の形容詞として「核心的」なる用語を使用させ、毛沢東、鄧小平に並ぶ党内の地位を固めようとの野望を持っているように見えます。本論評の言うように、習はこれまでの5年間に加え、次の5年間の任期を超えて、そのままさらにトップの座を維持しようとしているのかもしれません(90年代の江沢民、胡錦濤の時代以来,共産党総書記の任期は2期10年が慣例的に定着化)。
習近平は同時に、中央軍事委員会主席の座を維持しながら、実質的に軍に対する掌握度を強めようとしています。最近の報道によれば、共産党大会を控え、中央、地方の軍内幹部の抜擢とともに、「腐敗している」とのレッテルを張られた幹部の更迭を図りつつあります。軍内の人事に手を付けることは、習体制維持にとって、プラス、マイナスの両面の意味があり、注視する必要があります。
これまでに、すでに、中央軍事委員会副主席の郭伯雄、徐才厚が失脚しています。
王岐山(政治局常務委員、規律委員会主任)の扱いは、党大会の大きな注目点です。これまでに「腐敗」していたとして、拘束され、失脚した幹部たちの王に対する怨嗟には、きわめて大きなものがあることは容易に想像できます。68才という年齢に達した同氏が異例の措置により、留任できるかどうかは、よく分かりません。反対勢力からの王岐山への攻撃は個人のスキャンダルの類を含め、ネットなどで広く流布される状況になっています。
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