英チェスター大学のヒル研究員が、10月に行われる中国共産党大会の注目点を5つ列挙した解説記事を書き、8月30日付でThe Conversationのウェブサイトに掲載されています。要旨は次の通りです。
中国共産党は間もなく、第19回党大会を開催し「権力継承ゲーム」を始める。次の5年の、総書記、政治局常務委員を含む様々なポストが決まる。習近平は権力の掌握を緩めそうもない。我々は、何に注目すべきか。
1.習近平の野望
2012年に党総書記に就任して以来、習近平は地位を固めてきた。その中心は反腐敗運動だ。習支持者にとっては、反腐敗運動は党の正統性を損ねる不純な要素を取り除きたいとの習近平の真摯な願望だが、批判者は、反腐敗運動は政敵を除去し権力を固めるための見せかけの動きだと言う。いずれにせよ、習が次の5年も総書記に再選されることは間違いない。
さらに、習は中央軍事委員会主席の地位も維持し、軍への強大な影響力を行使することになろう。しかし、習には次の任期の5年を超えて影響力を拡大する意図がある、との噂がある。そうであれば、中国政治が徐々に制度化される動きから大きく逸脱することになる。
1990代以降、党総書記は一般に2期しか務めなかった。習が影響力を延長しようとするならば、それは、1960、70、80年代の「人治」への回帰を示唆する。
2. 年齢に関するダブルスタンダード
第19回党大会の後、習近平が威信を高め「父なる習近平」が出現したとしても、1960、70年代のような毛沢東主義のカルト的個人崇拝に完全に戻ることはないだろう。共産党は一枚岩ではなく、上海閥や共青団などの様々な派閥からなる。さらに、派閥間には重なり合いがある。しかし、党大会は、派閥の盛衰を示すだろう。
誰が常務委員になるかも重要だ。現在の常務委員会は60代後半の者で占められているので、党大会では大幅な入れ替えが見込まれている。最近の慣例は、68歳定年である。
この年齢制限は、60代前半の習近平、李克強首相には適用されないが、反腐敗の担当者である王岐山(党中央規律検査委員会書記)は68歳であるにもかかわらず常務委員の地位にとどまるかもしれない。そうなれば、習の力を象徴することになろう。
3. 元主席の影響力
1980年代の最高指導者、鄧小平は、2002年に胡錦濤が江沢民の後を継げるようにした。江沢民は2012年の習の権力掌握にとり助けとなった。しかし、胡錦濤には、2022年の習近平後継候補として子分の一人を常務委員に送り込む力があるのか不明である。
4. 様々な国内問題
中国は、技術発展に課題を抱えている。地方の貧困、環境破壊、輸出主導経済から消費主導経済への移行による中国経済の「新常態」がもたらす経済的混乱などである。習=李政権は、これらの問題に「中国の夢」や「国家再生」の一部として取り組んできた。ほどよく繁栄した社会を目指すということだ。党大会では、中国の夢の達成度が党により判定されることになろう。
5. 外交政策と北朝鮮
次の5年間の中国の外交政策についても見通しが得られよう。中国の近隣諸国は、南シナ海での領有権紛争、人民解放軍の増強に懸念を抱いている。党大会での部隊の再編、演説が、中国の方向性を示してくれるだろう。中国は地域大国になるのか世界大国になるのか。経済的プレイヤーになるのか、軍事的プレイヤーになるのか、外交的プレイヤーになるのか。
北朝鮮をめぐる米中対立はテストケースとなろう。党大会後、中国の指導者には課題山積であることは確実だ。
出典:Simon Hill,‘Five things to watch out for at the Chinese Communist Party congress’(The Conversation, August 30, 2017)
https://theconversation.com/five-things-to-watch-out-for-at-the-chinese-communist-party-congress-83177