2024年12月22日(日)

したたか者の流儀

2017年10月6日

 戦争の臭いがしてきた。臭いだけで終わったことも何度かあった。逆に影も形もないのに弾みで大戦争に突入したこともあった。今回の件もスローモーションで見れば100年前と大差はない。

 そんなとき徳俵で踏ん張るのは大政治家の存在であろう。そんな政治家が何人いるかが大きなファクターとなる。

(YuraDobro/iStock)

 理不尽や不条理の極みである戦争を肌で感じることができた青年は不運であると同時に、幸運だともいえる。政治家だけでなく実業界でも、

「戦争体験のある経営者は得がたいものがある」

「それだけで安心感ある」

 という言葉があった。しかしそんな経営者は既に鬼籍にはいってしまった。定年もない政治家も、さすがに少ないことであろうと思った矢先に、NHKの特別番組に中曽根康弘元首相がインタビューに答えていた。張りのある声と変わらぬ論旨を聞いていたら99歳だそうだ。

 80年代の世界を牽引したサミットの常連の一人が中曽根氏だ。当時の参加者は全て皮膚感覚で戦争を経験していたというより、軍隊経験をしていると考えてよいだろう。

 少し前だが、訃報があった。東西ドイツ統合の恩人、元ドイツ首相ヘルムート・コールが87歳でみまかった。

 ドイツは、社会民主党とキリスト民主同盟が他党と連携しながらやや長く交互に政権につくことが多い。亡くなったヘルムート・コールは、今回四選したメルケル首相の師匠筋でもある。

 サミット時の珍行動などで、英国のサッチャーから笑われたようだが、そのサッチャーから「あれほどのアホはみたことがない。しかし、結果は全て正しいので驚いてしまう」という賛辞が書き物で残っている。

 ただし、晩年に党資金と自己資金を混ぜてしまい、当時はコールの秘蔵っ子であったメルケルに匕首を突きつけられる形で表舞台から姿を消した。その後、糟糠の妻が自殺している。

 統合ドイツの初代ドイツ首相となった名誉とサッチャーからの賛辞は残ったが、果たして幸せな人生であったのだろうか。ドイツ政界一の巨体とされ、正確な重さは国家機密だというジョークも残っている。150キロを超えていたのだろう。初々しかったころのメルケルとの会話にも興味が湧く。


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