ペイリン、共和党の“オザワ”…
やり手はティーパーティを利用
例えば、「邪悪な天才」と呼ばれるカール・ローブ氏。1990年代の共和党による議会主導権の奪還と、それに続く2000年のジョージ・ブッシュ大統領誕生を巧みに取り仕切ったローブ氏は、共和党支持者層を覆う大きな怒りを利用しようとする代表的な共和党ストラテジストとして台頭している。
彼がうまく波に乗れるか、それともティーパーティー運動の一般会員の間に広がる「アンチ支配階級」熱に吹き飛ばされてしまうかは、実に興味深い問題だ。ローブ氏のことを共和党の「オザワ」だと思えばいい。
さて、言うまでもなく、共和党の副大統領候補だったサラ・ペイリン氏はあっという間に、ティーパーティー運動の国民的「ゴッドマザー」のような存在になった。だが、正式に運動を指揮している人は存在せず、ペイリン氏も主要団体を率いているとは言っていない。
主要団体をいくつか紹介しよう。「アメリカンズ・フォー・プロスペリティー」は「シチズンズ・フォー・サウンド・エコノミー」から分離した組織で、共和党のプロの政治ストラテジストが創設、運営している団体だ。公称160万人の会員を擁する同グループの資金をほぼ全面的に出しているのは、医療保険改革の反対運動を率いる大富豪デビッド・コッホ氏である。これまでに3000万ドルの資金を活動につぎ込んだという。
「フリーダム・ワークス」を創設し、運営しているのは、テキサス州出身の元下院院内総務ディック・アーミー氏だ。会員数は公称100万人、これまでに1000万ドル使ったという。
2009年2月にテネシー州の刑事弁護士によって設立された草分け的な団体の1つ、「ティーパーティー・ネイション」は、会員数が公称3万2000人、これまでに投じた資金は100万ドル弱だ。だが、そのうち10万ドルはサラ・ペイリン氏に払った講演料で、これが同グループを「一躍有名」にすることになった!
前出のティーパーティー・エクスプレスを創設したのは、共和党系の政界のベテラン2人だ。そのうち1人は、何らかの理由で「ティーパーティー・パトリオッツ」から追放され、対抗する団体に参画することで報復したエイミー・クレマー氏。エクスプレスの会員数は全国で公称40万6000人、これまでに420万ドル使ったという。
そして、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」の1人に選ばれたジェニー・ベス・マーティン氏が共同創設者に名を連ねる上記のティーパーティー・パトリオッツは、これまでに50万ドルを使ったことを認めるが、会員数は一切明かしていない。
先に述べたように、様々なティーパーティー団体の会員は腹を立て、激怒し、よくある言い回しを使えば「かんかんに怒っている」。それも、個々の問題について怒っているだけではない。
構成員はどんな人?
各種世論調査によれば、ティーパーティー団体の会員の圧倒的大多数は、普段は共和党支持者か、保守的で共和党寄りの無党派層だが、腹を立て、激怒するこれらの共和党支持者たちは、オバマ大統領やナンシー・ペロシ下院議長、民主党議員全般に怒っているのと同じくらい、共和党の指導層にも腹を立てているようだ。