ティーパーティー運動の会員について、最も際立つ、最も憂慮すべき面は、会員が総じてエリート層ではなく典型的な中産階級の白人であり、特にヒスパニックと黒人をはじめとした、米国社会の中で次第に大きなシェアを占めるようになった「マイノリティー(少数民族)」がほとんど参加していないことだろう。
このような嘆かわしい人種、社会の分裂が、多民族、多宗教を背景とする伝統的な民主党の「支持基盤」にどんな影響を及ぼすかは、予想するのが難しい。
ティーパーティーズの指導者層と一般支持者に共通する極めて顕著な側面は、福音主義のキリスト教が個々人の大きな原動力、動機になっているということだ。多くの世論調査では、今の政界支配階級にはびこる悪行(聖書に使われる意味での不道徳)は、「浄化」が必要であり、宗教的な意味で、国は精神的な「再生」が必要だという意識が強く表れている。
だが、こうした見方は普遍的なものではない。むしろ、極めて保守的な福音主義のキリスト教徒の感情と価値観が中核となっている。
さて、日本の社会、政治の世界に、このような宗教に基づく「目覚め」と政治行動への動きに相当し得るものはあるだろうか?
米国にとって大きな問題は、こうした怒れる白人民主党支持者が11月にどんな投票行動を示すか、だ。彼らはすべての「現職議員」、仲間の民主党議員にさえ背を向け、ティーパーティーの支持を得た超保守派の共和党候補に票を投じるのだろうか? これはオバマ大統領にとって最も支持獲得が難しかった民主党支持母体であり、大統領は実際、彼らを全面的に説き伏せられたわけではなかった。
というわけで、11月に何がどうなるかは誰にも分からない。だが、今のところ世論調査は明白に、共和党が全国的に勢力を伸ばし、「通常」であれば穏健的な選挙区では民主党が現在占めている下院議席の大多数を獲得し、保守的な選挙区では恐らく全議席を手に入れることを示唆している。
日本式ティーパーティは起きるか?
そして政治を動かすか?
さて、この辺でまとめに入ろう。これまでの議論の中で、日本に関係しそうなことはあっただろうか? 明らかに、日本には民族的、宗教的な相違は存在しない。また、大きな意味では、「通常」なら、経済的な階級の違いを利用することも難しいだろう。
だが、我々としては考えざるを得ない。もし日本の民主党が今後も難局から抜け出せず、いずれ大失敗する事態に陥る一方、もし自民党が過去の政党であり続け、若い日本人有権者にとって意義を失っていったらどうなるのか――。
日本でも、すべての「現職」に対する大衆の憎悪が生じるだろうか? 怒りと不満のせいで、「草の根」運動から新党が生まれる可能性はあるだろうか?
今秋、ティーパーティー運動が米国でどれほど勢力を伸ばすのか、我々には分からない。だが、11月になれば、答えがいくつか出始めるかもしれない。米国にとってだけでなく、将来の日本にとっても!!
次回は10月29日(金)を予定しております。
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