トランプ2.0が発足してから早1年が経過した。この間、トランプ大統領は前例に全く囚われない異次元ぶりをいかんなく発揮し、米国のみならず世界を大きく揺るがし続けている。
昨年は、米史上最長となる政府閉鎖が惹起され、さらには州兵が全米各地の主要都市に派遣されるという前代未聞の状況がなお続いている。6月14日には、トランプ政権に反対する650万人もの国民がトランプ氏の誕生日に合わせて全米各地で集い、「No Kings(王様はいらない)」抗議集会を実施して国家の深刻な分断を如実に示した。
対外政策でも、トランプ氏の破天荒な行動─同志国に対する高関税政策、親ロシア的なウクライナ戦争の和平案の支持、露骨な反欧州連合(EU)の姿勢、さらには麻薬密輸船とされる船舶への執拗な攻撃など─は枚挙にいとまがない。トランプ2.0は1.0の時とは様相は全く異なる。
米国は戦後、自由主義、民主主義、そして法の支配を掲げて世界秩序を担ってきたが、今そのパクス・アメリカーナは大きく揺らいでいる。国内でも、今年11月の中間選挙で共和党が下院連邦議会で過半数を維持するために、トランプ氏は同党が優位な「赤い州」に対し、民主党が有利な選挙区を解消する新たな選挙区割りを強引に設定するように要請している。これに呼応して、5つの「赤い州」が民主党の議席数を減らす区割りをすでに強行し、さらに複数の州が新たな区割りを目下実行中または検討している。
同様に、民主党が優位な「青い州」も極端な区割りを敢行して共和党に対抗しているが、その中で最も注目されたのが、民主党の5議席増を可能としたカリフォルニア州の区割りだ。これにより、テキサス州が強行した5議席増の区割りは相殺できることになる。
だが、こうした行為は民主主義に背を向けるものであるばかりか、米国の分断を一層深める。当然、分断によって米国はより内向きになり、その結果として世界をけん引せんとする意識も次第に希薄となる。逆に、これは新たな世界秩序の構築を企図する中ロ両国に千載一遇の機会を提供する。つまり、米国の現況は日本にとっては決して他人事ではないのだ。ましてや自国の安全保障を日米同盟に一方的に依拠している国だけに、米国の将来と日本の命運は切り離せない。
以上を踏まえ、本稿ではトランプ氏への理解を深めるために過去の米大統領と比較したい。現在、米国の有識者の間で比較対象としてよく取り上げられるのは、民主党のアンドリュー・ジャクソン第7代大統領(1829~37年)と共和党のリチャード・ニクソン第37代大統領(1969~74年)の両名である。前者は、政治的アウトサイダーとポピュリストの視点から、他方、後者はメディアとの対立と政治汚職の視点からの比較が中心に据えられている。しかし、本稿では敢えて彼らとは別の3人の大統領とトランプ氏を比較し、その考察を通じて米国の「復元力」について検討する。
