比較②─クリーブランド大統領
民主党のグローバー・クリーブランド第22、24代大統領(1885~89年、93~97年)は、米国史上初めて連続しない2期を務めた大統領だ。彼はマッキンリー氏とは対照的に非介入主義者であり、帝国主義を忌避した。このようにトランプ氏との思想的な乖離はあるが─クリーブランド氏は高関税政策にも反対─下野した後に再選を成し遂げ、大統領への復職を自らの正当性が世に認められた結果だと確信した。これは2期目当選直後に、トランプ氏が頻繁に口にしたvindication(正当性の立証)と全く同じ心境である。
苦渋の敗北から一転して勝利を手にしたことで、強烈な達成感と使命感を得て自己に対するエゴが増幅した。それゆえ、トランプ氏は正しい道を邁進しているという確固たる信念の下、米国の伝統を躊躇なく転換させて自らの復活勝利の意義を誇示するための原動力としている。こうした前例をことごとく打ち砕くトランプ氏の大胆な政策は、クリーブランド氏と重なる。
しかし、クリーブランド政権の2期目は、米大統領史では大失敗として理解されている。独善的に振る舞った彼は、忠誠を誓う者のみを抜擢する人事を果敢に進め、また、自らの政策を、野党との妥協もあり得る協力的な姿勢ではなく、大統領としての権力を最大限に駆使して実現しようとした。その影響もあり、米経済は失速して「1893年のパニック(恐慌)」が惹起され、さらには労働組合によるスト破りのために軍隊を出動させたことで、彼を再選へと導いた支持者層からも見放された。この失策によって民主党に対する支持は失墜し、同党はその後16年間も政権の座から追いやられた。
同様に、トランプ政権の評価も経済にかかっていよう。現在の米国では、トランプ関税の影響もあって物価は高騰し、労働者の生活は困窮している。これが解消されなければ、彼の従来の支持者による離心はさらに拡大しよう。実際、トランプ氏の支持率は低下しており、12月上旬時点で38%である(Economist/YouGov)。仮にAIバブルが弾けるなどして米経済に「2026年のパニック」が誘発されれば、現在の共和党はかつての民主党と同じ運命をたどるかもしれない。その場合、米国には民主主義を礎とした復元力が健在であることが証明されよう。
