2024年12月11日(水)

赤坂英一の野球丸

2017年10月25日

 のっけから手前味噌で大変恐縮だが、今年のプロ野球クライマックスシリーズ(CS)、私の予想が物の見事に(?)的中した。ファイナルステージ第3戦が行われる20日の朝、毎週金曜レギュラー出演しているTBSラジオ〈森本毅郎スタンバイ! 日本全国8時です〉で、「パ・リーグではソフトバンクの4番・内川聖一がもっと活躍しますよ。彼が打てばホークスも勢いが出てくるでしょう」としゃべったら、これが大当たり。第1戦から4戦連続でホームランをかっ飛ばし、全5試合で計7打点を挙げ、MVPに選ばれたのである。

(AvatarKnowmad/iStock)

 ラジオ出演の前日19日まではソフトバンクが楽天に2連敗していたため、あと2敗すればとんだ赤恥だ、と内心ビクビクしていた。それだけに、出演した20日からソフトバンクが3連勝、しかも第5戦は内川の犠牲フライで先制、これが決勝点となって日本シリーズ進出が決まった展開には、自分の頬をつねりたくなった。ちなみに、内川の4戦連続本塁打は2014年の日本ハム・中田翔に並ぶCSタイ記録で、同一ステージでは史上初。MVP受賞は3度目で、これも史上最多。試合終了後、工藤公康監督に続き、内川を慕う選手たちに5度も胴上げされたのも当然だろう。

 さて、それでは何故、私は内川が活躍すると思ったのか。実は、楽天・梨田昌孝監督のコメントがヒントになったのだ。CS第1ステージに臨む直前、梨田監督はこう言った。

 「メジャーリーグでは、ア・リーグ地区シリーズでヤンキースがインディアンスに2連敗してから3連勝した。ウチもあやかりたい」

 ヤンキースに楽天OB、2013年に球団史上初の優勝と日本一の立役者となった田中将大がいるからこその発言である。選手たちも同じ気持ちだったようで、CSがデーゲームで行われる日は、朝からNHK衛星放送でヤンキース戦が生中継されるため、試合前練習の合間を縫ってはベンチ裏でテレビ観戦、海の向こうのマー君を応援していたらしい。これは私の勝手な想像だが、いまでもシーズンオフには田中と一緒に自主トレをしている選手もいるから、LINEやメールでエールの交換ぐらいはしていたのではないだろうか。

 そこで、私は考えた。もし田中がまだ楽天にいて、これからソフトバンク戦に投げるとなったら、一番マークする打者は誰だろう。そういう質問を、田中がメジャーに渡る前、私は彼に直接ぶつけたことがある。マー君ははっきりとこう答えた。

 「やっぱり内川さんですよ。橫浜(現DeNA)時代に首位打者のタイトルを取ったころ(2008年)から、ほかのバッターと全然違う感覚を持ったタイプだなと思って見ていました。どんなに体勢を崩されても、必ず自分のポイントで捉えられるんですよね。しかも、引っ張って左へ長打を飛ばせるのはもちろん、右方向へも強い打球を打てるでしょう。もっと言えば、内川さんが打つと、ソフトバンクのチーム全体がノッてくる。相手の勢いを封じ込めるためにも、絶対に抑えなきゃいけないバッターなんですよ」

 もう5年前で、ソフトバンクの柳田悠岐がまだ控えに甘んじ、アルフレド・デスパイネもいなかったころの発言ではある。が、内川の「体勢を崩されても必ず自分のポイントで捉えられる」技術と、「打つとチーム全体がノッてくる」オーラはまだまだほかの選手の追随を許さない。工藤監督がCS前に「4番は内川でいく」と予告してオーダーに入れたのも、そういう内川の力を認めていればこそのことだろう。だから、今年のファイナルステージ初戦で内川が本塁打を打ったとき、試合には負けたものの、最後にはソフトバンクが巻き返すのではないか、と私は思ったのだ。


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