2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月8日

 北朝鮮をめぐる危機の打開策としての、米国と北朝鮮の話し合いの提案は、カーターに限られるわけではありません。その中でカーターの提案に注目するとすれば、それはカーターが、北朝鮮の核開発で一触即発の危機にあった1994年に北朝鮮を訪問、金日成と会談し、それが「枠組み合意」につながったという点です。「枠組み合意」では、北朝鮮がプルトニウム製造可能な原子炉と、現存使用済み燃料を破棄し、IAEAの査察を認めるなど、核廃棄に本気で取り組むと思われました。カーターの貢献は高く評価されました。しかし、後に北朝鮮が密かに濃縮をしていたことが暴露され、「枠組み合意」が無に帰したことは周知の通りです。

 カーターは自己の経験から、北朝鮮は米国の話し合いの呼びかけに乗ってくると考えているようですが、北朝鮮が本気で呼びかけに乗ってくると考えているとしたら、その見通しは甘いのではないでしょうか。

 カーター自身が述べているように、北朝鮮の最大の関心は、米国からの先制軍事攻撃に対し、北朝鮮の体制を存続、維持させることです。

 北朝鮮がそのために必要なのは、米国本土を核攻撃できる能力の取得で、その能力があって初めて米国の先制攻撃を抑止できると考えていると見られます。

 そうであるとすれば、北朝鮮はその能力を取得するまでは、核、ミサイルの開発は止めず、その能力を獲得して初めて、米国との話し合いを真剣に考えるのではないでしょうか。もし仮にそれ以前に話し合いに応じるとしたら、それは時間稼ぎのためでしょう。

 カーターは、「北朝鮮は、平和条約で米国が北朝鮮を軍事攻撃しない保証を得ることを望んでいる」と言っていますが、米国がそのような保証を与えるか定かでありません。たとえ与えたとしても、北朝鮮がそれで安心するとは思えません。北朝鮮が対米抑止力を得た後、米国との平和条約を望むとすれば、最優先の要求は在韓米軍の撤退であると思われます。

  
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