救国党の解散は、ケム・ソカが起訴された時から予想されていたことです。カンボジアの政党法は今年に入って二度改正され、最高裁判所が解党を命じることが出来るようになったようです。最高裁判所の長官は人民党のメンバーだといわれており、その独立性は怪しげなものです。最高裁判所は救国党の解党を命じるとともに、その118名のメンバーの政治活動を5年間禁ずるとしています。
トランプ政権がこういう談話を出すのは初めてではないかと思われます。ホワイトハウスの報道官談話は、救国党の解党命令に重大な懸念を表明しています。カンボジア政府の行動に具体的な措置を取るとして、その最初のステップとして来年の選挙に係わる支援を停止すると述べています。このままでは来年の選挙は正当でも自由でも公正でもないものとなるとして、救国党に対する措置の撤回、ケム・ソカの釈放、野党、シビル・ソサエティー、メディアの正当な活動の許容を要求しています。11月16日、EUも報道官談話を発表し、同様の懸念を表明するとともに、EUのEverything But Arms scheme(後発開発途上国に対する関税なし、クオータなしの優遇措置、カンボジアの関心品目は衣料品)からカンボジアが除外される可能性に言及しています。
フンセンの恣意的な策謀で人民党による一党支配の国となったカンボジアとわが国はどう付き合うのかという問題があるでしょう。ASEAN重視は日本外交の基本です。タイのクーデターに際しても、極力平静な対応に努めたように思います。タイのクーデターとフンセンのやっていることのいずれがより罪が深いかという議論はあるかも知れません。カンボジアに対しては選挙制度と司法体制の整備を含め民主主義の国造りに多大の協力を成して来た歴史もあります。しかし、何事もなかったかの如き対応はいかにも不都合に思われます。法の支配と人権の尊重を重視する日本の立場が疑われてはならないでしょう。当面、来年の選挙への対応の問題があります。米国は報道官談話にあるように、選挙にかかわる技術的・財政的支援を停止するようですが、日本は技術的・財政的支援を行う構えのようです。過去にもその種の支援を行って来ました。しかし、カンボジアの選挙管理当局者は米国とEUの支援がなくても、中国、ロシア、日本の支援があるから問題ないと言っているらしいです。これは不都合なことです。日本としては、財政的に支援し、選挙管理の要員を提供すれば、「選挙は公正に行われた」と言わざるを得なくなるかも知れません。これまた不都合であるに違いありません。
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