カンボジアでは、最大野党の救国党が解散を命じられるなど、民主主義が危機に晒されている状況にありますが、トランプ政権がこれを非難する声明を発表しました。ワシントン・ポスト紙は11月18日付けで、「そういう現実は無視出来ないことにトランプ政権はやっと気が付いたか」という趣旨の社説を掲載しています。要旨は次の通りです。
フンセン首相はカンボジアの民主主義をゆっくりと締め上げているが、11月13日のマニラでのASEAN首脳会議で、トランプ大統領を煽て上げる発言をした。彼はトランプが他国の内政に干渉しないと約束したことを喜ぶとの趣旨を述べた。
それもそのはずで、11月16日、予想されていたことだが、最高裁判所はフンセンの意を受けて最大野党の救国党の解散を命じた。2012年に設立の救国党はフンセンの32年の支配に初めての挑戦を突きつけた。カンボジア政府は、救国党は「カラー革命」を企てていると主張しているが、これはいい加減な口実である。フンセンは来年7月に選挙を控えているため、実質的に唯一の野党を抹殺することにより環境を整えつつある。去る6月には彼は救国党に棺桶を用意しておくよう警告していた。救国党は定数123の議会で55議席を有するが、最高裁判所の判決により、これを失うことになる。
救国党の党首ケム・ソカは9月3日逮捕され、でっち上げの反逆罪で起訴された。彼は遠い場所の刑務所に拘束されている。カンボジアでは民主主義が罪人にされている。彼の前任者のサム・ランシーも追われて、今はパリに逃亡している。
最近、フンセンはシビル・ソサエティーや言論の自由の抑圧に乗り出していた。巨額の追徴課税を通告されて「Cambodia Daily」という新聞が閉鎖に追い込まれた。地元のFM局はRadio Free AsiaとVoice of Americaの中継を禁じられた。RFAはその記者が逮捕の脅かしにあって、オフィスを閉じた。8月には米国の民主党と緩い関係にあるNGOのNational Democratic Instituteが活動の停止を命じられた。
フンセンは権威主義者であるが、従来ある程度の政治的敵対勢力を容認して来た。しかし、今や民主主義の酸素である競争を一掃しつつある。救国党の解散は民主主義の終わりだと同党の関係者はいう。
トランプは就任演説で「我々は我々の生き方を誰にも押し付ける積りはない」と述べたが、これはフンセンのような権力者に自由を窒息死させるよう促すものである。11月16日、ホワイトハウスはフンセンを非難する報道官談話を発表し、彼の非民主主義的行動に対して具体的措置を取ると表明した。遅きに失したが、トランプ政権は、民主主義が危険に晒されている時、他国の内政といえども無視出来ないという現実に目を覚ましつつあるのであろう。
出典:‘The White House’s much-needed rebuke to a country smothering democracy’(Washington Post, November 18, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/the-white-houses-much-needed-rebuke-to-a-country-smothering-democracy/2017/11/17/9ad1968e-ca56-11e7-8321-481fd63f174d_story.html