文在寅政権の協定延長 – しかし沈黙する政党、マスコミ、市民団体
昨年のあの反対は一体何だったのか
驚くべきことに文在寅政権は「延長」という選択をした。大統領府は11月27日の記者会見で、文在寅大統領の指示で日本との軍事情報包括保護協定を1年延長することにしたと発表した。就任後、検討をしてみた結果、協定は必要であると判断したというのだ。つまり、昨年朴槿恵政権が締結した協定の必要性を認めたものである。これは同時に、昨年から今年初めまで続いた反政府闘争で軍事情報包括保護協定を批判したのは、単純に「言いがかり」だったことを自認したものといえる。
それでは当時の文大統領と共に声を荒げながら朴政権を批判した現与党、マスコミ、少女像の前の市民団体はどのような反応を見せているのか?彼らの反応は「沈黙」そのものだ。昨年のように軍事主権を失われるとか、軍事機密が日本に流れるというようなセンセーショナルな報道をする言論は一つもない。マスコミも昨年の批判が朴政権攻撃のための単なる「言いがかり」だったことを自ら示しているのだ。
これと似たような例として、米軍のサードミサイル配備を挙げることができる。米軍のサードミサイル配備も、朴槿恵政権が導入し、配置を進めると、野党(現与党)、市民団体、マスコミは国がすぐにでも滅びるかのように騒ぎ立てた。彼らは自然破壊、人体に悪影響を及ぼす電磁波などを理由に激しい反対闘争を繰り広げ、反対運動中に興奮した市民が紛失自殺する事件まで起きてしまった。
しかし、文在寅政権に入ってサード配置はそのまま維持されているにも関わらず、昨年のような反対運動は見られない。配置された地域では依然として反対運動を行う少数の市民がいるが、昨年とは違ってマスコミから注目を受けずにいるのが現実である。
日韓の軍事情報保護協定とサードミサイルの配置に対する怒りが突然冷えてしまった理由は何だろうか? 日本に軍事機密流出を防ぐ措置、自然破壊を減らし、電磁波をなくす奇跡の装置でも導入したからだろうか?
文大統領も、マスコミも、市民団体も、軍事情報包括保護協定の締結が安保上の脅威になるものではなく、米韓関係を考えた時サードミサイル配備はやむを得ない選択であることは、おそらく最初から知っていたはずだ。だとしたら、昨年までロウソクを挙げていた彼らが急に静かになった理由は明らかである。それは、「政権交代」という究極の目標を達成したからである。つまり、どの政権であれ避けられない選択だったにもかかわらず、それを締結、導入した政権だけを悪者にし、国民を煽ったのだ。そして結果的に大統領弾劾と政権交代という目標を達成したのである。
権力闘争を巡って政治家やマスコミが「ダブルスタンダード」を見せるのは、韓国だけでなく、どの国でも見られる光景である。しかし、文在寅政権がサード配置の維持に続き、韓日軍事情報協定を延長したというニュースを刑務所内で見ることになる朴槿恵元大統領の感慨は果たしてどのようなものだろうか?
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