2024年12月6日(金)

Wedge REPORT

2017年10月12日

 突然の解散に伴い行われることになった衆議院選挙の話で秋が盛り上がっている。第一野党民進党の解党、小池都知事が率いる希望の党の躍進、東京―大阪を代表する地域政党の連携など政界の地殻変動にマスコミは連日大騒ぎだ。

 それぞれの政党、そして政治家たちの動向が話題になっている今、にわかに注目を集めている話題がある。在日外国人の地方参政権に関する問題である。小池百合子氏が率いる希望の党が、民進党議員を受け入れる際に挙げた「条件」の一つとしてこの問題に対する姿勢を問うたのだ。

(TheaDesign/iStock)

小池新党への合流条件「外国人参政権への反対」

 小池氏は希望の党からの出馬を希望する民進党員を全て受け入れるのではなく、人を「選ぶ」と明言した。そして、その条件として新しく希望の党に加わる人たちに「政策協定書」の署名を求めた。この協定書には小池氏の政治的スタンスを明確に示す内容が含まれている。「安全保障法制の運用」「憲法改正への支持」「外国人地方参政権付与に反対」等がそれである。これらの項目に同意する人たちだけを受け入れるというのだが、旧民進党員の中には、小池氏の提示した条件に反発する人たちが現れ、彼らは新しく立憲民主党を結成するに至った。

 民進党分裂の原因の一つとなった小池氏の「条件」は、一部から「踏み絵」とも呼ばれ、批判の声があがっている。中でもリベラル系のマスコミは外国人地方参政権付与に反対する姿勢が「寛容と多様性に反する」と強く反発している。例えば、『外国人への地方参政権付与には「反対」という右派色の濃い主張も盛られている。「社会の分断を包摂する、寛容な改革保守」という党の要綱と、どう整合するのか』(10月4日、朝日新聞社説)、『(外国人地方参政権の反対は)「寛容」「多様性」という看板と矛盾しないだろうか』(10月3日、毎日新聞社説)のような意見が代表的である。

 そのような反対の声が気になったのか、希望の党が6日に発表した衆院選の公約と政策集には「外国人の地方参政権付与に反対」が盛り込まれなかった。しかし、外国人の地方参政権付与に反対することが即ち「不寛容」であり、「多様性の否定」だろうか? 当事者の外国人たちもみんなそう思っているだろうか? 答えは「NO」である。少なくとも外国人の地方参政権付与に激しく反対してきた外国人集団は確かに存在する。それは朝鮮総連系の在日朝鮮人たちである。

朝鮮総連「外国人地方参政権付与は同化させるための蜂蜜を塗った毒」

 実のところ、在日コリアンの間では地方参政権を求める声や運動も存在していた。朝鮮半島に生まれ日本に渡ってきた在日1世は祖国の政治状況により多くの関心を示していたが、日本で生まれた2世、3世たちは居住国の日本で日本人と同じ権利を行使したいと望んだからだ。だが、在日コリアンの声は必ず一致しているものではなかった。彼らは、賛成と反対に分かれ激しく対立した。

 在日コリアン社会を両分する団体は、韓国系の「民団」と北朝鮮系の「朝鮮総連」の二つである。民団は地方参政権獲得運動に積極的だったが、朝鮮総連は地方参政権獲得運動が「日本同化論」だと激しく反対した。例えば、1996年中央日報のインタビューで朝鮮総連の傘下団体、在日朝鮮人人権協会の柳光守会長は次のように述べている。

 問) 朝鮮総連が先月から急に参政権反対運動を始めた理由は?

 答) 参政権運動は日本への同化、帰化政策に互応するもの。蜂蜜を塗った毒と同じだ。前からこれに反対していたが、最近民団の一部が朝鮮総連との対決姿勢を強めながら、朝鮮総連を吸収しようと参政権獲得運動を利用しているから反対運動を始めた。


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