初日97万人動員という好発進はしたものの……
7月26日、日韓両国で関心を集めている映画『軍艦島』が公開された。前作『ベテラン』で1300万人の観客を動員したリュ・スンワン監督のもとに、ファン・ジョンミン、ソ・ジソプ、ソン・ジュンギ等、今最も人気のある俳優陣が集結、さらには韓国音楽、映画界に最も大きな影響力を持つ会社CJエンターテイメントが投資をした映画であることから製作段階から話題となっていた映画だ。
この映画が日本から注目を集める理由は映画の舞台が長崎県に位置する小さな島「端島」を背景にしているという点だ。19世紀から炭鉱開発が始められ、近代的なコンクリート製の集団住宅が建設されたことで有名な端島は2015年ユネスコ世界文化遺産に登録され、海外にもその名を知られるところとなった。日本の立場でみると、新たな観光資源を一つ確保したことになる。
だが韓国では、日本が端島をユネスコ世界文化遺産として申請した時から反発が始まっていた。韓国は端島を「強制連行された朝鮮人労働者たちが酷使された地獄の島」として認識しているためだ。日本が世界文化遺産に申請した時から韓国のTVや新聞等では強制連行や酷使があったことを繰り返し伝えてきたため、今韓国の大部分の国民たちはそう認識している。「過去に存在した一般的な炭鉱村」と認識する日本と、「悲劇の現場」と認識する韓国。そこでの生活を描いたという映画が論争の火種になることは必然であった。
酷使された朝鮮人鉱夫の写真は「日本人鉱夫」だった
映画公開の前日に明らかになった「嘘の写真」
映画の公開に水を差したのは、公開前日に報道された一件のニュースだ。韓国の主張を海外に紹介してきたある大学教授が米国ニューヨークの街中にある大型モニタに端島が地獄のような島だったという内容を掲示したのだが、そこに使用された鉱夫の写真が朝鮮人ではなく日本人だということが明らかになったのだ。この写真は韓国内ではよく知られている写真で、これまで日本統治時代の残酷な強制連行について教育し、宣伝するための「素材」として広く使用されてきたものであった。TVの教育放送、ニュース、それに歴史書籍で幾度となく紹介されている。日本の産経新聞がこの誤りを指摘し、その出所を追及して来たのだが、これに反論することができなかった教授が、この誤引用を認めたのである(http://www.nocutnews.co.kr/news/4821398)。産経新聞によるとこの写真は明治時代の福岡県筑豊炭鉱の写真だという。
この事実は韓国人たちに衝撃を与えた。なぜならば、映画『軍艦島』の中でもこの写真を連想させる場面が登場するからだ。つまり、身動きもままならないような狭い洞穴の中に入り、半分、寝そべるような姿勢でつるはしを持ち石炭を掘り出す場面は間違いなく、この写真からヒントを得て作成されたはずだ。「事実に基づいて」制作した映画で、その根拠として使用された写真が実は朝鮮人労働者ではなく、時代背景すらも全く違っていたのだ。
インターネット上に書き込まれたメッセージを見るだけでも、韓国人の動揺が伝わって来る。とんでもない写真を持って来て外国に宣伝するのは「国の恥」だと批判し、「もしかしたら軍艦島について(TVや新聞が語って来た内容)も映画の(宣伝の)ために(事実を)誇張しているのではないか?」、「この映画も反日感情を扇動する映画に過ぎないのではないか?」といった懐疑論まで登場した。