WEDGE REPORT

2017年8月2日

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巨大文化権力の映画館独占に対する反感
全国2000カ所の映画館を占領した『軍艦島』同時上映

 『軍艦島』が公開初日97万人を動員し、歴代最高記録を打ち立てたというが、これは、事前に予測された範囲内の出来事である。『軍艦島』はこの日、全国に2575カ所ある映画館のうちの8割に当たる2027カ所で上映されたのである。つまり、劇場を訪れた映画ファンたちに他の選択肢がなかったのである。

 『軍艦島』は韓国の映画、音楽業界を支配していると言っても過言ではない巨大企業「CJエンターテイメント」が投資した映画である。CJエンターテイメントでなければ、2000カ所を超える映画館を確保することは不可能である。つまり、この日、低予算映画や中小規模の制作社による映画には上映の機会すらも与えられなかったということである。この点については、韓国内の批評家や監督たちの間でも「独占・寡占のレベルを超えて狂気、恥を知れ」といった批判が相次いだ。

 少なくとも映画ファンたちが反発の声を上げ始めたのは、この映画を上映する映画館の数が2000カ所を超えたというニュースが流れたときからだ。

映画が水曜日に公開された理由は?
毎月最終水曜日は「文化の日」……チケット半額

 初日観客動員数において成功が約束されていた理由はもう一つある。それは「タイミング」である。韓国において通常映画が公開されるのは木曜日である。だが、『軍艦島』は水曜日に公開された。この一日のズレは観客動員数において大きな違いをもたらす。なぜならば、韓国の映画館では、毎月最後の水曜日は政府により「文化の日」と指定され、夜の時間帯の映画チケットを半額で買える。つまり、「売上」が多少減ったとしても、広報に利用することのできる「観客動員数」を伸ばすためには、相当に有利なタイミングが選ばれていたのだ。その効果は「軍艦島」の座席占有率が初日の72%から翌日には30%に暴落したことを見てもうかがうことができる。

 また、ここには「組織的支援」もあった。韓国の二大労働組合である民主労総と韓国労総、そして公務員労組などが組合員たちを対象に団体観覧会を設けて観客を動員したのだ。インターネットで掲載されているある地方公務員労組の告知には、チケット一枚を1000ウォン(約100円)で配布しているとの内容もあった。慰安婦像に続き「強制連行労働者像」の建設を企画しているのが民主労総と韓国労総である。両団体としては「強制連行労働者」という素材の映画への支援は必然的なものかもしれない。

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