2024年11月22日(金)

子育ていろいろ 本いろいろ

2017年12月15日

親から子どもへの「指導」は難しい

――自分の子どもだから客観的になれないということはありそうです。

おおた:自分のことはある程度客観的な視点を持てる人でも、子どものことになるとそうではなくて軸がぶれぶれになったりして。僕は、「今子育てでこんな気持ちになっているけれど、この気持ちをもし人から相談されたらなんて答えるかな」って自分で自分をカウンセリングすることがありますね。

――それくらい引かないと客観的にはなれない。

おおた:難しいですよ。訓練を受けている人間でも。塾の先生たちもそう言いますよ、自分の子どもの受験は無理って。

――そうなんですね。

おおた:やろうと思ったらできないことはないかもしれないけれど、でもそれって親にも子どもにも負荷が高いんですよね。密度が高過ぎちゃうから危険だよっていうことをわかっておかないと、お互いを傷つけあってしまう。赤の他人にアウトソーシングする方が健全性を保てるのでおすすめです。

――話が習いごとからどんどんずれてしまってすみません。習いごとに関しても、もし親が教えられることだとしても、基本はノータッチの方がいい?

おおた:なるべく手出ししない方がいいっていうのが今の潮流だと思いますね。

習いごとのコツは節目をつくること

――『習い事狂騒曲』に書いてあったことで「いいな」と思ったのが、これがこの子に合っているとわかるまでは、いくつかの習いごとを試してみてもいいっていうところです。

おおた:「一度始めたら続けなければいけない」って習いごとによくある思い込みですけど、何を続けるかを取捨選択しないとわからないところもありますよね。いくつか試してみて選ぶっていうのは、ポジティブな意味でやっていいと思います。それから小刻みな目標をつくることと、「○級になったら」「○年生になったら」など辞めどきを決めておくこと。

――節目をつくる。

おおた:「中学受験するから5年生になったらこの習いごとはやめようね」とか、前もって決めておく。そうしないと、中学受験が始まって「なんとなく続けられそうだから」って続けて、結局ギリギリになって、両方うまくいかなくなって敗北感の中でやめるっていうようなことがある。

――私もそうなのですが、習いごとをネガティブなかたちでやめた人って、私たちの世代では多いような気がします。辞めどきを決めておくことで、ネガティブ経験がだいぶ減るならいいなと思います。

おおた:そうなんですよ。辞める時期を決めたり小刻みな目標をつくると、惰性で続けてしまうこともなくなる。惰性になると、子どもだけじゃなくて親も子どもの成長に気付けなかったりします。意識的に節目を設けるのは、子どもの習いごとのコツだと思います。

暇な時間も大切

――『習い事狂騒曲』の中では東大生が子ども時代の習いごとを振り返る対談もあります。東大生のひとりが、子ども時代は忙しすぎたと言っていたのが印象的でした。今、暇な時間があっても何をしたらいいかわからない。彼は親御さんに言いたいことを聞かれて「(子どもに)無理をさせないでください」と。もちろん、習いごとを楽しんだと言っていた学生もいましたが。

おおた:子どもはボーっとする時間に伸びますからね。そこで何をしようかなって考えたりして、自分が何をしているときに幸せなのか、何を見て美しいと思うのか、自分の価値観に気付く。それを積むことで人生ができていく。何かのスキルをインストールするためだけに習いごとをたくさん詰め込むと、子どもが自分自身と対話する時間を奪うことになってしまいますね。

――サブタイトルに「正解のない時代の「習活(しゅうかつ)」の心得」とありますが、習活もある意味正解がないというか、子どもにとって毒にも薬にもなる。そこを踏まえつつ、親がどのような心構えをしておくべきかがわかりやすい一冊だと思いました。

おおた:ありがとうございます。「習活」って言葉は全然はやらなかったけれど(笑)、受験も習いごとも、結果だけではなくその過程で培った成長が大事だと言っていきたいと思います。

今回のポイント
・英語やプログラミングの「早期英才教育」は必須ではない
・節目をつくるのが習いごとのコツ
・子どものスケジュールを詰め込みすぎず、暇な時間も大切に


  
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