2024年7月23日(火)

古希バックパッカー海外放浪記

2017年12月17日

お小遣い稼ぎのスモールビジネスが予想外の展開に

 リカさんのところには色々な日本の女性が相談に来る。やはりインド人との恋愛や結婚の悩みが多いようだ。若い人ばかりでなく中年の女性のケースもあるという。リカさんから聞いたエピソードで忘れられないのがサトさんの物語だ。

 会社員だったサトさんには、旦那と既に結婚した娘がいる。今は会社員の旦那との二人暮らし。53歳で早期退職して現在57歳。色白でベビーフェイスなので40代前半くらいに見えるらしい。サトさんは5~6年前から毎年インドを訪れるようになった。

 数年前にインドでバッグなどを作って日本のお店に出品して販売するビジネスを思い立った。退職後のお小遣い稼ぎである。そこでインドの地方の市場に材料の調達に行った。布地を仕入れて仕立屋でバッグに縫製してもらい製品を日本のお店に買い取ってもらうという算段だった。この時に気が利く21歳の青年と知り合い彼に材料の仕入れ、仕立屋との交渉などを手伝ってもらった。

 リカさんによるとインドの市場では彼のように自分の知り合いの店に客を案内して小遣いを稼ぐコミッション・ボーイという使い走りを生業にしている人間が多数いる由。

ビジネスパートナーと恋に落ちて

 このボーイに仕事を手伝ってもらっているうちにサトさんはボーイと深い関係になってしまった。サトさんによると気が利いて良心的で献身的な美形ボーイという。二回目にその地方を訪れたときボーイから「父親が危篤なので薬を買って至急故郷に帰ることになったので3万ルピー(≒5万4000円)貸してほしい」と真剣な顔で懇願された。

 それから数日後にサトさんがフェイスブックを閲覧しているときに暇なので試しにボーイの本名を入力してみたらボーイのホームページが出てきた。そこには現在ネパールで休暇を楽しんでいるという近況と何枚もの写真がアップされていた。どの写真にも欧米系の女子とイチャイチャしているボーイがいた。サトさんは咄嗟に騙されていたことを悟った。サトさんはリカさんを訪ねてきて、号泣しながらリカさんに顛末を打ち明けた。

マナリー川は雨季になると激しい濁流となる

二度目の恋の行方は

 翌年ダラムサーラを再訪したサトさんは、今度はオートリキシャー(オート三輪のような乗合タクシー)の30歳のドライバーと知り合い恋仲になった。ある日ドライバーから「アナタと一緒に暮らすためにもっとお金を稼ぎたい。借り物のオート三輪でいくら働いても賃料を払うと大した稼ぎにならない。アナタのために四輪自動車を買って自営タクシードライバーになりたい。30万ルピー(≒54万円)で車が買える」と口説かれてサトさんは30万ルピーを出した。

ヴァシュシトの村外れの滝は観光客で賑わっている

 さらに「営業許可ナンバー付きのオートリキシャーが20万ルピー(≒36万円)で売りに出ている。すごく安い買い物だ。このオートリキシャーを貸せば毎月1万ルピーくらい賃料が取れる。二人のアパートも借りられる」と口説かれて20万ルピーを出した。

サトさんの旦那さんは「つまらない男」

 サトさんは頻繁にダラムサーラや日本からリカさんに電話してくる。毎回電話口でサトさんは陶酔しきった様子でドライバーとの甘美な恋を語る。

 サトさんには人生最後の恋に生きることが全てだ。リカさんが旦那さんについて尋ねると「もし主人に知られてもかまわない。主人が別れると言えば分かれるだけ。主人にとり私は近くにいる便利な家政婦くらいの存在かしら。一緒に旅行に行っても一人で先にどんどん歩いて行ってしまう。ホテルもレストランも何も相談せずに一人で決めて。いつも無口で何が面白くて生きているのか分からない男なの。一言でいうと“つまらない男”」と総括した。

ヴァシュシトにある温泉の男湯。昼間10時以降はすいている。朝8時前と夕方5時以降は仕事前と仕事後の男たちで大混雑

 しかしニッポンの世の中の旦那の大半が筆者を含めて“つまらない男”に該当するのではないか。娘さんが嫁いだ後の夫婦二人暮らしの生活がサトさんにとり“守る価値のない生活”と評価されていることに些かショックを受けた。

意外と醒めているサトさんの将来設計

 サトさんは25歳年下のドライバーとの将来をどのように考えているのか。リカさんによるとサトさんは甘美な恋に陶酔している一方で現実的分別も持っている。タクシー運転手の彼の収入は大したことはない。サトさんは自分一人の時は一食30ルピー(≒54円)ですませているが、彼氏との夕食にはビールが提供されるレストランで1000ルピー(≒1800円)を支払っている。サトさんは自動車のお金を出したことも毎回食事代を払うことも含めてコストであると割り切っている。

リンゴ農園で収穫したリンゴを担いでトラックまで運ぶ季節労働者

 「人生最後の恋のためにお金を使うことが自分にとり最高のお金の使い方じゃないかしら。車のお金のことも100万円で人生最高の恋を買ったと思えば安いものよ。将来のことは何も考えられないし考える必要もないわ。目の前の恋に生きることだけ」

⇒第21回に続く

  

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