今回は、損害保険や資産などのコンサルティング会社・ピー・アール・エフ(新宿区)の浜中健児社長を取材した。1990年に住友海上(現:三井住友海上)火災保険に入社し、損害調査部、自動車営業部、一般営業部などで経験を積む。1999年に退職後、(株)ピー・アール・エフを設立し、代表取締役に就任した。
浜中社長にとって「使えない上司、使えない部下」とは…。
「学歴や職歴なんて関係ない」
「いい大学、いい会社なんて…」?
うちの会社で中途採用試験を行うとき、最終面接で30歳の男性が2人残ったとします。2人は8年前、同じ大学・学部を卒業し、それぞれ一流の大企業とごく普通のレベルのベンチャー企業に就職しました。8年間、同じような仕事をしてきて、面接をした印象はさほど変わらないとします。
この場合はおそらく、大企業に勤務する男性を採用するでしょうね。私の20数年の経験にもとづくと、双方はパソコンで言えば、OSが違うように思うのです。大企業の男性が「使えない」と社内と言われていたとしても、採用するかもしれません。
一流の大企業は、社員間の競争の質や中身が普通のベンチャー企業のそれとは大きく異なると思います。採用試験の難易度、人材育成の態勢、定着率の高さ、上司や周囲の社員、取引先のレベルは、総じて一流の大企業のほうがごく普通のベンチャー企業より高いのです。つまり、鍛えられ方が違うのです。
こういう環境に8年いると、おのずとOSもある程度は変わってくるように思います。一部には例外もありますよ…。あくまで、1つの大きな傾向のことを話しています。
私は損保に勤務していたこともあり、今も損保の社員とビジネスで接します。一流損保に入った社員は3年目でそこそこの戦力になっているのです。一流の大企業では、目先の仕事の実績だけなく、責任感や規律、協調性なども含め、高い総合力を求められます。成果にコミットメントをしようとしなかろうと、常に上司などからは見られているものです。
総じてレベルの高い上司のもと、潜在的な能力の高い同世代の社員と密度の濃い競争をすると、成長ははやいものです。「学歴や職歴なんて関係ない」「いい大学、いい会社なんて…」と批判する人がいますね。それも1つの考え方ではあるのかもしれませんが、私は異なった捉え方をしています。企業社会を人材の質という観点から見ると、学歴や職歴はそれなりの意味や説得力を持っていると思うのです。もちろん、学歴や社歴に関係なく、すばらしい人はたくさんいます。そういう方々を否定はしません。
「部下の手柄は俺の手柄、
部下のミスは部下であるお前が責任をとれ」
一流の大企業の社長になることは難しいことだと思います。あらゆるレースに勝ってきた、つまりは負けていないというのが、彼らのすごいところでしょうね。自社の不祥事で記者会見をし、釈明する姿を見て揶揄することもできるのかもしれませんが、そんなアホじゃないと思うのです。
仕事ができて、高い実績を残してきたことに加え、管理職になってからは部下からの人望もある程度はあったはずです。そうでないと、大きな部署をまとめ上げ、一定の成果を出すことはできないでしょう。
人材のセレクトも確実に進んでいます。配置転換やグループ会社などへの出向・転籍を行い、セレクトを上手くしています。セレクトの精度もおおむね高いと思います。役員たちは「使える管理職、使えない管理職」の区別をきちんとしているように私には見えます。
このクラスの企業は、代えの人材が多数います。レベルの低い管理職をそのまま置いておく理由がないのです。一例でいえば、私が大手損保にいた頃、「使えない上司」と思える方が数人いました。「部下の手柄は俺の手柄、部下のミスは部下であるお前が責任をとれ」というタイプです。部下からすると、本当に「使えない」ですよね。今だから言えるのですが、無責任さに呆れかえり、殴ってやろうと思った人もいます…(苦笑)。
「使えない上司」たちは課長どまりで、上にはなかなか上がれません。その後は、小さな会社へ出向していきました。あるいは、いくつもの地方支社を転勤し、定年を迎えたと聞きます。あるところからははい上がれないようにする仕組みがあるのです。
こういう環境の中での競争に勝ち続けるのですから、トップに立つ人は総合力がものすごく高い方でしょう。処世術や要領、運だけで、一流の大企業の社長になることはありえないと思います。